「2023年に年間売上高を現在の2倍以上にする」――。今年2月、ツイッターのジャック・ドーシーCEOは突如として野心的な計画を発表した。2020年に37億ドルだった売上高を、2023年に75億ドル(約8000億円)以上に引き上げる。
ツイッターの株価はほかのアメリカのIT大手に比べて伸び悩んでいたことを受け、昨年にはアクティビストファンドのエリオット・マネジメントがドーシー氏の退任要求を突き付けていた。収益拡大を急ぐのにはこうした背景がある。
売上高を伸ばすにあたり、経営指標として重視する「収益化可能な1日当たりのユーザー数」、つまり広告を閲覧するユーザー数は年平均で最大20%伸ばし、2023年末には現状の1.6倍となる3億1500万人にする方針だ。
ツイッターの収益の大半を占めるのが広告収入だ。そのためにはユーザー数を伸ばし、一人ひとりのアプリ上の滞在時間を増やして広告に触れる機会を増やすことが不可欠となる。
そこで同社は今年に入り、新機能を矢継ぎ早に展開し始めている。ドーシーCEOは2月のアナリスト向け説明会で、「2023年までに開発スピードを2倍、つまり従業員1人当たりの機能数を倍増させ、ユーザー数と売上高を直接的に伸ばしていく」と語っていた。
今回取材に応じたツイッターの笹本裕・日本法人代表もこの点を強調する。「ツイッターの開発ツールは創業当初から同じものを使ってきたが、新機能の開発に時間がかかっていた。数年前から進めてきたツールの刷新が昨年完了し、新機能を追加するスピードが格段に上がった」。
これまでは140字以内の「ツイート」を通した文字でのコミュニケーションを中心としていたツイッターだが、昨年11月から縦型の画像や動画を投稿する「Fleet(フリート)」、今年5月からはユーザー同士で音声で会話する「Spaces(スペース)」を開始し、ユーザーの表現の幅を広げた。
ただ7月15日には、フリートの提供終了を早々に発表。その理由について会社側は、「フリートをきっかけに新たにツイッターに参加する人は想定したほどには増加しなかった」とした。一方ですでに頻繁にツイートする人の活用はあり、フリートのような形式でツイートできる機能の試験的な運用を近日中に開始する予定だという。
スペースに関しては「日本でも好評だ」と笹本氏は話す。「一種のラジオのようなもので、例えばラジオ番組の本放送後に"反省会"をスペースで開催するといった事例もある。リスナーがそこに参加することもできるので、(話し手と聞き手の)距離感を縮められる」(同)。
スペースの提供を始めたのは音声SNSの「クラブハウス」が日本で一時的に大流行した後で、「ツイッターが模倣した」といった声も多かった。ただ笹本氏は「スペースはそれ以前から準備しており、決してクラブハウスをまねるという意図はなかった。表現方法が多様化しなければツイッターの存在感が薄れていくという危機感があった」と応じる。
6月にはスマホアプリに大きな変更を加えた。従来はツイッターを開くと画面下部に4つのタブ(ホーム、検索、通知、ダイレクトメッセージ)が表示されていたが、一部のアプリユーザーを対象に、"5つめ"となるスペースのタブを試験的に増やした。ここには各ユーザーの好みに合ったスペースが表示される。「4つのタブが5つになっただけで大したことはないかもしれないが、われわれにとっては大きな意味を持つ」(笹本氏)。