PC市場に詳しいIDCジャパンの市川和子アナリストは、「クロームOSのシェアが上がった要因のほとんどは学校向けでの伸びだ。最近は一般消費者向けのマーケティングにも力を入れている。だがマイクロソフトが最も脅威と見ているのはマックOSだろう。若い世代を中心に支持は厚く、最新のマックブックやiMacは性能と価格のバランスもよい」と分析する。
市場での存在感を維持したいマイクロソフト。今回のウィンドウズ11ではグーグルやアップルに対する「アンチテーゼ」と取れる新機能も備えた。それが「根底から作り直した」(パネイ最高製品責任者)という、ウィンドウズ向けのアプリを取りそろえる「マイクロソフトストア」だ。
アップルがiPhoneやiPad向けに「アップストア」、グーグルがアンドロイドスマホ向けに「グーグルプレイストア」を展開するように、スマホの普及とともにアプリをストアからダウンロードする習慣が根付いた。
アップストアやグーグルプレイでは、アプリ内課金について開発者から30%の決済手数料を取る(年間売上高100万ドル以下の場合は15%)。だが以前からマイクロソフトストアの手数料は低く、一般のアプリで15%、ゲームアプリでは12%だ。
さらに今回、アプリ開発業者が自前の課金システムを持っているなら、マイクロソフトは手数料を取らない方針を明らかにした。
「世界はもっとオープンなプラットフォームを必要としている」。マイクロソフトのサティア・ナデラCEOは発表会見でそう語った。
アプリストアをめぐっては、人気ゲーム『フォートナイト』を手がけるアメリカのエピック・ゲームズが、アップストアの課金システムを強要し高い手数料を取っているとしてアップルを提訴した。各国の独占禁止法当局も目を光らせる。
ウィンドウズ11ではさらに、アンドロイドアプリが利用可能となった。だがマイクロソフトはグーグルではなくアマゾンと提携し、主にアマゾン製タブレット向けだった「アマゾンアップストア」経由でアンドロイドアプリをダウンロードできるようにした。OSで競合するグーグルへの牽制にも見える動きだ。
マイクロソフトは2012年からアプリストアを展開しているが、歴史的に開発者が利用していたプログラム形式がサポートされなかったため、これまで開発者の支持を得られなかった。アプリの品ぞろえは広がらず、ユーザーの認知度もかなり低かった。
そこで今回、サポートする形式を大きく広げ、ストアへのアプリ公開を容易にした。
発表会見では、アメリカのアドビが写真編集ソフト「フォトショップ」などを含む「クリエイティブクラウド」をマイクロソフトストアに提供することが公表された。アマゾンのストアでダウンロードした動画投稿アプリ「TikTok」がウィンドウズ上で動く映像も見せた。
2014年のナデラCEOの就任以来、マイクロソフトは「オープン」であることを強調してきた。自社製品を押しつけるようなかつての姿は今のマイクロソフトにはない。端末でのユーザーの利便性を高めれば、基幹事業となったクラウドの成長にもつながる。ウィンドウズ11の使命もそこにあるだろう。