仕事が遅い人が「良いと信じている3大悪習慣」

そのため、あれやこれやとたくさんのタスクを進めていると、ワーキングメモリはどんどん消費され、ひとつの物事にフォーカスする力を失ってしまいます。これを回避するには、とにかく行動を迷わせる選択肢を減らしていくだけです。

人間は選択肢が多いほど、行動に起こせません。どれがいいか判断を迫られ、それだけでワーキングメモリが浪費されていくからです。

事前準備が好きな人は、行動を始めるにあたってインプットを繰り返し、さまざまな計画を練ります。プランA、B、C、D、E、F……と、可能性のある事柄を洗いざらいにしておき、そこから最適なプランを選べばいいと考えます。

しかし、脳科学的にはこれは最悪です。選択肢が増えれば増えるほど、あなたのワーキングメモリは浪費され、身動きが取れず、かえって迷いに支配された散漫な働き方になってしまいます。

行動を始めるにあたって計画を練る必要があるならば、最大でもプランA、B、Cの3つもあれば十分です。

直感で考えたA、論理的に考えたB、まったく別の切り口で考えた逆張りのC。この3つを持っておけば、必ずそのどれかが正解です。もし間違えたら、すぐに改善して試すまでです。

高速仕事術でアウトプットを繰り返して、高速で経験値を伸ばして直感が磨かれていきます。直感とは、それまでの成功体験や失敗体験が積み重なることで培われていきます。脳のデータベースに正解ルートに至るまでの経験値が多ければ多いほど、正しい直感が働くのです。

たとえば、プロがチェスをする場合、5秒で考えた手も、30分かけた手も、86%は同じであるというデータがあります。つまり、いくら熟考しても結果はほとんど変わらないのです。このことは「ファーストチェス理論」と呼ばれています。

アウトプットをせず、失敗や成功体験を重ねていない人は、この直感力が育まれません。逆に正解だけにとらわれずにアウトプットしていけば、いつのまにかあなたのデータベースは蓄積され、直感力は伸びていきます。

自分にはまだそんな経験値はないと思う人も、何かを始めるときのプランは3つ程度に留めておきましょう。

計画を練ることより、アウトプットすることのほうがはるかに価値があります。失敗というデータベースも手に入り、改善のトライ&エラーも積めるので、あなたをはるかに成長させてくれます。

最近は、若者を中心に「マルチタスク」がもてはやされていますが、そもそも、脳は一度にひとつのことにしか集中できません。

スタンフォード大学のエヤル・オフィル博士は、「人間はマルチタスクなどしていない」「タスクからタスクへすばやく切り替えるタスクスイッチングをしているだけだ」と述べています。

タスクスイッチングをしていると、はたから見ればマルチタスクしているように見えます。しかし現実には、脳は一度に2つ以上のことに集中できないため、仕事の効率やスピードは落ちてしまうのです。実際、ハーバード大学の研究では「最も能率の高い社員たちは注意を向けるタスクを変える回数が少ない」と発表されています。

私の体験や研究でもそのとおりで、徹底的に「シングルタスク」で働いたほうが、はるかに仕事のパフォーマンスをアップさせることができるのです。

先ほどご紹介した「5秒ルール」を実践するときも、必ずひとつのタスクにフォーカスするようにしましょう。

デスクには座るな!つねにかかとを浮かせろ

アウトプット(行動)は、デスクやパソコン上だけで生まれるものではありません。現実を動かすすべての行為がアウトプットです。

仕事に行き詰まってしまったら、5秒ルールでデスクから離れ、誰かに解決策を聞くことだって、広い意味でのアウトプットです。5秒ルールで書店に駆けつけて、なぜ仕事が行き詰まっているのか、本で答えを見つけるのもいいでしょう。

『自分のやりたいことを全部最速でかなえるメソッド 高速仕事術』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

なにより大切なのはグジグジと悩まないこと。目的に近づかないムダな選択や集中力の浪費をやめることです。

デスクの上で問題解決の糸口が見つからないのならば、そこはあなたが座っているべき場所ではありません。常にかかとを浮かして動き出せるような心意気でいることが大切です。

本書には、「インプットしたものは必ずアウトプットする」「すぐ改善する、何度もアウトプットする」を原則に、脳科学に基づいた仕事術のメソッドがたくさんあります。本書を読めば高速仕事術のノウハウをすぐに理解することができるでしょう。

脳は何歳になっても刺激を与えれば成長させることができます。ぜひ、試しに3日、高速仕事術のメソッドを1つでも2つでも実践してみてください。ハイパフォーマンスを発揮する自分に驚くはずです。