長い夜も、いつかは明ける。アフターコロナに向けて、われわれはどう備え、何をすべきなのだろうか。多くのビジネスパーソンにとっての関心事であろう。コロナ禍においてはマスクがニューノーマルとなり、人が集まることや旅行、出張といった移動が制限された。会議や学校の授業もオンライン中心に切り替わり、日本社会が一変したかのような印象を受けた。
だが、コロナ禍がもたらしたこうした「変化」を詳細に見て行くと、多くは「コロナ前」からの課題であったことに気付く。コロナ禍が日本社会を変えたというより、積年の課題を可視化したというのが実情だったのだ。
夜が明けきらない今、われわれがまずすべきは、「コロナ前」に立ち返って日本が抱えていた課題を思い起こすことだ。そしてそれがコロナ禍でどう浮き彫りにされたのかを知ることである。
コロナ禍で一番大きく影響を受けて風景の変わった場所、それは〝夜の街〞だ。
飲食店は蔓延防止策として時短営業を迫られ、夜の8時、9時には閉店。与党議員が銀座のクラブに深夜まで滞在していたり、厚生労働省の官僚たち23名が午前零時近くまで宴会を楽しんでいたりという不謹慎な事例も発覚したが、多くの人たちは自粛要請に従っていた。
そのため多くの繁華街では夜の10時にもなれば、閑散とした光景が広がっていた。ついこの間まで、忘年会やクリスマスなどで〝夜の街〞がピークを迎える12月になると、深夜にタクシーを捕まえられない日があったことなど、いまや夢のようだ。
コロナ禍が収まってくれば飲食店の営業時間は元に戻るだろうが、もはや私たちは便利な24時間生活をあきらめなければならないところにまで来ている。
なぜなら、コロナ流行のかなり前から、ファミレスやコンビニの24時間営業は人手不足で、すでに破綻寸前だったからだ。コロナ禍で24時間営業の見直しが広がってきているが、時短営業を余儀なくされた企業や店舗ばかりでなく、「戦略的に縮む」ための一環としてこの機に乗じて進めている側面もあるのだ。
例えば、ロイヤルホストが24時間営業を廃止したのは2017年のことだった。1店舗当たりの営業時間を平均1・3時間短縮し、翌年には年中無休もやめて年3日の店舗休業日を設けた。
奇しくもこの2017年、ヤマト運輸もアマゾンの当日発送からの撤退を表明した。ドライバーの負担が過重となり、再配達の時間指定のシステムも一部変更された。人手不足によって「便利すぎるサービス」は、崩壊の兆しを見せていたのである。
ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長と対談した際、24時間営業をとりやめたのは、「人口減少時代に備えて従業員の働き方を見直すための方策」だと説明された。働き手の確保が難しくなったので、アルバイトをなるべく正社員として登用し、短時間勤務のスタッフはシフトを固定化したのだという。
営業時間を短縮したのだから、当然売上は減るはずだ。予想では年間約7億円の減収を見込んでいた。すると驚くことに、24時間営業をやめたら、逆に7億円の増収になったのだ。念の為にいっておくが、コスト削減による増益ではない。売上が増えたのだ。