人材育成のマネジメント研修、コーチング研修、指導員研修の質疑応答で必ず登場するのは「ミスの多い後輩や部下」への指導法です。
ミスをしないようにする対処策は、メモとチェックリストが双璧なのですが、同じようなミスを繰り返す人の特徴としては、
といった共通点があります。例えばアプリケーションの開発部門のFさんも、そんな若手社員です。
先日も開発から運用に引き継ぐ際の書類の書き方を間違えて、違う設定になってしまい本番では動きませんでした。その前も東京、大阪、名古屋でリモート印刷の設定をしたはずが、東京、大阪、福岡になっていました。
こうしたFさんのようなミスの多い人に「ミスが多いから気をつけて」と注意しても、効果は長続きせず、すぐに元に戻ってしまいます。
ここでは「言い方」もさることながら「ミスを減らす方法」がより重要になります。具体的な方法としては「メモ」か、業務によっては「チェックリスト」になりますが、多くの場合、ミスは「メモ」で防ぐことができるようになります。
メモは取ったが、どこにメモしたかを失念してしまう人もいますので、メモは1冊のノートにして、必ず日付をつけてプロジェクト名や顧客名を書かせて、ポイントとなる項目を備忘録として記録させましょう。
よく「ポイント(要点)をメモするように」と指導する人がいますが、教えられる側にとっては、あまり改善にはつながらない指導方法ではないでしょうか。
誰でも、ポイントとなりそうなことは反射的にメモしようと思いますが、ミスはむしろ数字、つまり期限の日時、時間、数量、価格のところから引き起こされることが多いものです。ですので、「ポイント(要点)と数字の部分はメモしてね」の方がベターです。
実際に、ミスを起こさないような行動を能動的に促したい場合は、「途中での確認や見返しを心がけるんじゃなくて、ルーティンにする方法で、やりやすそうなやり方ってある? 具体的なやつで……」という言い方が効果的です。
途中での確認や見返しを心がけることももちろん重要なのですが、それらを「心がけることができないからミスが発生するのです。確実な行動変容を促すには、日々のルーティンに落とし込んだ方が効果が出やすいという現実があります。
しかも、この言い方は指示や命令ではなく、あくまで本人に考えさせているので、自己決定、つまり「自分で決めたことをやりたい」というメカニズムが作動し、継続性を生み出します。
より効果的な対策を講じるために、ミスの原因について本人に考えさせるなら、「どういう時にミスが出やすいか、傾向みたいなものってある?」といった聞き方もあります。
「テンパっている時」とか、逆に「気持ちや時間に余裕のある時」とか「〇〇社の仕事の時」とかに行きつけば、根本原因が特定される可能性もあるので、解決のための手が打ちやすくなります。
ミスによって元気をなくしていたら、「大活躍してる5年目社員の〇〇さんも、新人時代はミスが多かったんだけど、○○をするようになってミスが減ったから、試してみたら?」という共感、激励というコミュニケーションも試みて欲しいと思います。