堀江貴文氏、新球団設立「経営面の不安感じない」

球団ニックネームについては「お察しの通り仙台の球団(2005年にNPB参入を意図したときのライブドア・フェニックス)に拠っています。ロゴも似せました。深い意味はありませんが、面白いなと思っています」とした。

クラウドファンディングの実施も

球団経営に関する質問に対しては「予算規模は1億円程度と考えている。チケット収入などは微々たるものなので、スポンサー収入に加え、クラウドファンディングなどでやっていきたい。サッカーの今治FCの岡田武史代表は、小口スポンサーも回ったと言っておられたが、法人個人の営業を強化したい」と答えた。

ただし「オンラインサロンで数千万円規模のイベントを開催してきた実績もあるし、経営面での不安は感じていない、むしろ選手、スタッフを集めるのが大変」と話した。

九州アジアプロ野球リーグへの加盟申請は今年度に行われるが、リーグ戦への参戦は来年度になるだろう。新型コロナ禍が峠を越してからの参入となり、良いタイミングだと思う。

筆者は2月頃に、独立リーグ関係者から「ホリエモンが独立リーグに関心を持っている」という話を聞いた。3月に九州アジアプロ野球リーグの田中敏弘代表理事に話を聞いたときも「参入を予定している球団がある」と言っていた。堀江氏が2月に埼玉武蔵ヒートベアーズのアドバイザーに就任したのも独立リーグ参入への布石だったのだろう。

ベンチャー業界の風雲児という印象がある堀江貴文氏だが、ここまでの動きは妥当で、的を射ている。「ライトなファン層を相手にしたマーケティング」は、プロ野球のトレンドである「ボールパーク構想」に通じる。また地元密着のスポンサー営業は、独立リーグ運営の基本中の基本だ。さらにNPBとの連携も必要だ。

堀江氏は、ソフトバンクグループの孫正義会長や、楽天グループの三木谷浩史会長兼社長に対して揶揄するような発言をSNSで発して世間を騒がせているが、ホークスとの連携も重要視しているし、楽天生命パーク宮城の「ボールパーク構想化」についてもしっかりチェックし、評価している。したたかだと思った。

筆者は独立リーグの新球団参入を何度も取材している。多くの経営者は大きな夢を語り、球場にたくさんの人を集めたいと熱心に語るが、その多くは短期間で夢破れ、撤退したり他企業の支援を仰ぐことになる。

それに比べれば、堀江氏の考えは、極めて現実的だ。そのうえ「当落線上のプロ野球選手にチャンスを与えたい」と言う言葉でもわかるように「野球愛」もあるのだ。

堀江氏の独立リーグ参入で変わること

「資金」「人材」そして「有望選手」。独立リーグは「足りないもの」ばかりだが、中でも「足りない」のは「信用」ではないかと思う。独立リーグ「徳島インディゴソックス」とサッカーJ2「徳島ヴォルティス」は同じ2005年のスタートだ。当初は、地元での評価は大差がなかったが、ヴォルティスが天皇杯などでJ1の有名チームと対戦したりJ1に昇格したりすると、両者の評価は大差がついた。

日本サッカーのトップリーグに連なるヴォルティスと、あくまで四国の地域リーグで戦うインディゴソックス。地元の報道を見てもステイタスの差は歴然だ。

独立リーグがNPBとの連携を熱望するのも、資本や体制面以上に「日本のトップリーグとつながっている」という「信用」「権威」が欲しいのだと思う。

堀江氏が独立リーグに参入し成功を収めることは、独立リーグがスポーツビジネスとしての正当な評価、そして「信用」「ステイタス」を得ることにつながるのではないか。期待をもって見つめていきたい。