金持ちになると実はストレスも膨らむ納得の訳

最近はシェアハウスで暮らす若い世代が増えています。何かを分かち合い、共有することは利他的で、他者への感謝の気持ちも生まれます。人は多様な人とつながると、幸せを感じられるのです。

そういう意味でシェアハウスは、貧しくてもみんなで力を合わせて生きていた、江戸時代の長屋のような生活様式を再現できるシステムだと思います。「人のお世話にはなりません」という生き方は、幸福学の観点から見ると不幸な生き方なのです。

私の知り合いに、年収800万円ほどもらっていた一流企業を辞めて、宮崎のある町に移住した人がいます。

農業復興の仕事に携わって年収は3分の1ほどに減ったそうですが、周りの農家の方々が「これ食べな」と美味しい食べ物を持ってきてくれるので、お金を使う必要がないそうです。自然も豊かで、地域の人たちとの交流も楽しくて、東京にいた頃より100倍幸せだと言っていました。

以前、あるメディアに、年収1000万円でも不幸な人と、年収400万円でも幸せな人の違いについての調査結果が載っていたことがあります。そのときも、年収1000万円でまだ足りないと思う人は不幸で、年収400万円でも満足できる生き方ができていた人は幸せでした。

宮崎に移住した知人は、自然の豊かさと人との豊かなつながりがある生活によって、お金では得られない幸せを手に入れたのだと思います。

欧米ではなぜ寄付の文化が根付いたのか

一方で、お金は十分足りているけれども幸せではない、という人もいます。その場合は、お金を自分のためだけでなく、他人のために使うと幸福度が高まります。

ケチな人ほど、ストレスホルモンのコルチゾールが増えることが研究結果でわかっています。でも、そのずっと前から、欧米の富裕層は社会貢献や貧しい人たちのためにお金を使うことが当たり前になっています。それは寄付の文化が根付いているからなのですが、なぜそうなったかご存じでしょうか。

新約聖書には、「お金持ちが天国に行くのはラクダを針の穴に通すより難しい」と書いてあります。そのため信者は、お金持ちになると天国に行けないと思っていました。ところが、ピューリタン革命の頃にカトリック教徒(旧教徒)とプロテスタント(新教徒)に分かれてから、後者が聖書の解釈を変えたのです。

ビジネスが成功してお金持ちになっても、それは神に与えられた職務をまっとうした結果でしかない。だから、稼いだ分を社会に還元すれば天国に行けるのだと、考える人が増えたのです。その宗教的思想が西洋人に広がったので、お金持ちになると当たり前のように社会貢献活動の支援や寄付をはじめるのです。

日本人にそのような思想はありませんが、どんなに大変な時代も村社会で力を合わせて生きてきた歴史があります。

ところが、村がなくなり核家族化して、格差が広がり、自己責任論を押しつけられる今の社会を生きる人たちは、誰にも頼れないと思い込みがちです。するとお金しか信じられなくなるので、現金の預貯金が多い国になったのだと思います。そのような社会でも幸せになるためには、やはり程よい距離感でつながれる温かい人間関係を育むことが大事です。

先ほども例にあげたシェアハウスやSNS、オンラインサロンなどのコミュニティを通じて、新しい形の仲間づくりをはじめている若い世代も多いです。コロナ禍でテレワークが広がった影響もあり、Iターン、Uターンで地域とのつながりを取り戻す人たちも増えています。

幸せになりたいなら、まずは人を幸せにする

また、フリーランスとして自由に仕事する人のほうが、会社員より幸福度が高いというデータもあります。だからといって、いきなり脱サラして安定した生活を捨てるのはリスクが大きい、という人もいるでしょう。

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その場合は、やりたいことで副業をはじめたり、ボランティアをして人に感謝されるようになったりすると、人とのつながりによって幸せを感じられるようになります。

幸せになりたいなら、まずは自分が人を幸せにする。愛されたいなら、自分から人を愛する。

そう意識して行動することで、多様な人たちとつながり、豊かな人間関係を育むことで、私たち人間はお金持ちになるよりも幸せを感じることができるのです。

働き方や生き方を見直したいと思う人は、ぜひこのことを覚えていてもらえると嬉しいです。

(構成:樺山美夏