「自分だけの強み」を見つけるための17つの質問

しかし、苦しいときにこそ、才能のタネを見つけるエネルギーは湧いてきます。もし今、あなたが困難に直面している、あるいはどん詰まりの状況であれば、それは才能のタネを見つける機会です。才能を見つける最短距離にいると考えましょう。

リストラされたり、お金がなくなったり、病気になったり、恋愛で絶望したり……。

そんなとき、人は「このままでいいのだろうか?」と考えるようになります。物事が自分の思いどおりにいかず苦しいときに初めて、私たちは自分の中にある自分と本気で向かい合うことになります。ふと立ち止まったときこそ、「才能のタネ」が発見される可能性が高まります。その機会を逃さないでください。

7度の転職は僕にこんな“贈り物”をくれました。

それは、僕自身の才能のタネ「個別対応が得意な特性」と、業務で必要に迫られて身に付いた、いわば経験によって育まれていった才能のタネ、「日本市場に適したやり方を見出す能力」を自覚させてくれたことです。

海外企業が日本で製品を販売しようとするとき、いくら海外では人気のものであっても、多くの場合、そのまま持ち込んだだけではヒットしません。これを日本で売るにはどうしたらいいか。日本市場に適したやり方、それを考える力です。

僕が以前に勤めていた、Fitbitでの例で端的に説明します。

Fitbitは、2014年に日本法人を立ち上げた当時、Apple Watchよりも高いシェアを誇り、ウェアラブルデバイス市場で世界1位でした。しかし、日本では知名度がゼロに近かったのです。

本国であるアメリカは、人々が日頃から運動を生活に取り入れ、フィットネス意識が高いので、この製品を売るのにも、フィットネス、エクササイズ、ランニングといった言葉を用いて活動をしていました。

もちろん、日本でも、これらの言葉は日常的に使われていますし、運動を習慣にしている人もいます。しかしながら、アメリカと比較すると、こういった習慣のある人口は圧倒的に少なかったのです。

そこで僕たちは、フィットネスと健康との違いを明確にしました。

フィットネスとは、運動をするための身体能力を高めること。それに対して健康とは、身体のすべての機能が最適な状態にあること。このように定義して、アメリカはフィットネスに関心が高く、日本は健康に関心が高い、と仮定したのです。

日本では、ウォーキング、睡眠、理美容。Googleトレンドで調べると、その傾向は如実に表れていました。そこで、すべて健康という方向から消費者に仕掛けることにしたのです。つまり、アメリカのようにフィットネス、エクササイズ、ランニングから入るのではなく、日本の実情に合わせ、ウォーキング、睡眠、理美容といった健康管理から入ったのです。

すると、仮説どおり、日本人の“腹落ち度”は圧倒的にいいものとなりました。僕が辞めた後、2019年にFitbitはGoogleに買収されるという報道がありましたが、運動、食事、体重、そして睡眠を記録することで、健康を改善する製品として、日本でも広く知られるようになりました。とくに導入している企業では、従業員の健康に対する意識を向上させ、日々の行動変革へ導く役割を果たしています。

僕は幸運にも、こういった海外で人気のある商品を日本市場に適したやり方で持ち込むという実績を、Fitbitより前に在籍していたMicrosoftやAcerでも積む機会がありました。

ですから、現在僕が勤めている、ワイヤレスオーディオメーカーのSonosから日本法人代表の話をいただいたとき、僕のこの“強み”に期待されていると自己分析したのです。

マーケターでも、営業でも、開発でも、経営者でも、職業はなんでもよくて、僕が「やりたいこと」と「できること」、そして「他者から求められること」が交わる点が、この日本市場に適した売り方を考えることだったのです。