「書くこと」が苦手な人が知らない「文章の型」

少しだけ「型」を身につけることで、相手が納得する文章が書けます(写真:xiangtao/PIXTA)
企画書やプレゼン資料、依頼書、メールなど“書くことが苦手”と感じているビジネスパーソンは少なくないでしょう。人気の国語教室を運営する善方威氏は、「学校では読書感想文などの『感想』を書かせられることはあっても、論理的な文章を書く機会はほとんどなかったため、多くの人が苦手としている」と指摘します。
ですが、そんな人も実は、少しだけ型を身につけることで相手が納得する文章が書けるといいます。ビジネスシーンでも入試の記述問題でも大活躍するという“文章の型”について聞きました。
※本稿は『全試験対応! わかる・書ける・受かる 超思考力』より一部抜粋・編集したものです。

思考を上手にアウトプットするコツ

詰め込んだ知識を問う入試から思考力入試へと流れが変化したことによって、国語のみならず思考力を高めなければ解けない問題が増えていますが、こういった問題は、論理的にものを考える方法(「思考の道具」)で解決できることを、前回までの記事でお伝えしてきました。

この「思考の道具」を使えば、国語だけでなく、社会、適性検査、そして東大の歴史の問題にも対処することができるうえ、社会に出たときにも大いに役立ちます。

そして深めた思考は、上手に「アウトプット」していかなければなりません。いくら頭のなかで素晴らしい思考を展開していたとしても、うまく表現できなければ、宝のもちぐされ。思考していないのと同じとみなされても仕方ありません。「アウトプット」にはコツがあります。今回は、学生でも社会人でも活用できるいくつかの文章のコツをお伝えしましょう。

日本語は主語の省略が可能な言語です。そして英語の「S・V」のように、主語のすぐ後に動詞がくるのではなく、主語と述語のあいだに多くの修飾語句が入る言語です。「ポイントはうしろ」。そのように意識することで意図をうまく表現できるのです。

そのため、1~3文の短い文章を書くときでも、一番大切な内容は最後に持ってくるようにしなければなりません。そうすることで読み手は、最後にきた内容が大切だということがわかります。これを逆にしてしまうと、まちがって解釈されることがあります。例で確認していきましょう。

私たちは最後に書かれたことが、相手の真意だと理解する傾向があります。そのため、メールなどの文章においても、その順番に気をつけなければなりません。たとえば、風邪で会社を休んでいた部下を気遣いつつ、締め切りを知らせるメールを送るとします。下の2つのメールの印象を比べてください。

いかがでしょうか。同じ内容ですが、【メール2】のほうが優しい印象を与えるのではないでしょうか。【メール1】では、受け取るほうは「無理するなと言っているのに、原稿を催促している」と感じてしまいます。いっぽう【メール2】は、「締め切りはあるけど、無理をしないように」と言われていると感じます。同じ内容なのに、順番を変えるだけでこれだけ印象が違ってきます。

相手を気遣うのであれば、気遣いを示す文章を最後に持っていったほうがいいのです。私は妻へのメールでも実践しています。おすすめです。

少し長い文章を書くときには、次の2つの要素を入れていきます。

・「具体的な内容」
・「抽象的な内容」

どちらか片方だけでは、説得力のある文章を書くことは困難です。抽象的な内容だけで文章を仕上げてしまうと、読者が実感を持てる文章にはなりません。日記以外の文章は、読み手のことを念頭に置き、読み手が心の底から納得できるように書くことが大切です。そのために必要なのが、具体的な内容です。