発達障害でも「要領がいい人」「悪い人」の境界

小鳥遊:私もTO DOリストを消すことに快感を覚えるようになりました(笑)。タスクのほかにも書き出したほうがいいことはありますか?

嫌なことも1回だけ書き出して、忘れる

樺沢:悩んだときや嫌なことがあったときも効果的です。たとえば上司に怒られて落ち込んだら、そのときの感情をすべて細かく書き出す。大事なのは、1回だけ書き出すこと。何度もアウトプットすると記憶が強化されて忘れられなくなってしまいます。

タスクの書き出しも悩みの書き出しも、脳の「ワーキングメモリー」と呼ばれる作業スペースを空ける目的があります。なにかを覚えている状態は、それだけ脳のキャパシティを使っているということなので、今やるべきことに全力を発揮できなくなるんですね。「書いたら忘れる」というのを日頃から習慣化しておくと、脳を効率的に使えるようになります。

小鳥遊:ミスをしてしまったら内容だけでなく防止策まで書くようにしていますが、そうすると安心できる気がします。

樺沢:それは「フィードバック」と呼ばれる作業。自分のアウトプットのよかった点と悪かった点、ミスを繰り返さないためにどうするかを書き出すことで、行動が方向修正されて成長につながります。なにかに悩んだとき、「事実」は書き出してフィードバック作業、「感情」は書き出して忘れる、というように切り離して対処することが大切ですね。

樺沢:自分の気持ちを切り替える方法として、「切り替えワード」を持っておくことも有効です。たとえばスマホを落として壊してしまったとき、起こったことは元には戻せませんから、修理に出すなどの次のアクションに集中すべき。私はよく「しょうがない」「それはそれとして」といったワードを声に出して脳に暗示をかけますが、これを「アファメーション効果」といいます。

それで実際にピンチを乗り越えられると、次にピンチに陥っても「前回これで切り替えられたから」と冷静になれる。自分の決めぜりふを作って、育てていく感覚ですね。

小鳥遊:決めぜりふを育てる! なるほど。私はピンチに陥ったときによく「この状況しびれるなぁ」と呟きます。あえてちょっと笑いにすることで客観的になれるんです。

F太:僕の切り替えワードは「深刻になるな、真剣になれ」かな。小さな成功体験を積み重ねて習慣化しておくと、いざというときに自分を救ってくれるツールになりますよね。

パフォーマンス向上に「睡眠」「運動」はマスト

F太:習慣化といえば僕、樺沢先生が勧めている「朝散歩」にハマっていて。以前までは、ただ歩くのがもったいなくてオーディオブックを聴きながら歩いていたんですけど、あまり楽しめなくて継続できなかったんです。でも、それを音楽に変えたら楽しくなってきて、今では「今日はどんな音楽に出会えるかな?」とワクワクしながら散歩しています。

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樺沢:続けるためには「楽しい」という感情が必要。季節ごとの景色や鳥のさえずりを楽しみながら歩く「マインドフルネス朝散歩」もおすすめですよ。朝日を浴びることで心の安定や集中力を高めるセロトニンが活性化され、体内時計も整うので、朝散歩はぜひ習慣化してほしいです。

小鳥遊:私は先生の本を読んで寝る前のスマホをやめたら、眠りが深くなって寝起きもよくなりました。頭がスッキリして、仕事により集中できています。そう考えると、仕事をうまく進めるには生活習慣を整えることも大切なんですね。

樺沢:その通りです。要領がよくない人は、実はただの睡眠不足……というケースも多い。明け方までオンラインゲームをしてから会社に行く、なんて人は要注意です。まずは睡眠や運動を見直して、そのうえで仕事術や思考法を取り入れてみると、パフォーマンスが驚くほどアップするはずですよ。