2019年12月から徐々に経済に影響を及ぼしている新型コロナウイルスの感染拡大ですが、物流業界にも大きなインパクトを与えています。
宅配での大きな変化は「置き配」が登場したことです。届いた荷物を玄関先に置いてほしいとインターフォン越しに頼む、最初から置き配にするなど、非接触が推奨されるなかさまざまな場面で必要とされています。
西武百貨店では、混雑を避けてコインロッカーで荷物を受け取る実証実験を始めました。不在時の再配達はドライバー負担にもなるので、置き配により軽減されていくと思います。
世界に目を向けたときの大きなトピックは、昨年11月の「W11(中国ECシングルデー)」で、中国EC大手の「アリババ」が開催した4日間のセールで売り上げが7.9兆円に達したことです。楽天市場の年間販売が3.8兆円、百貨店5.7兆億円、セブン-イレブン5兆円(ともに2019年)ですから、いかに大きいかわかります。
W11の2019年の売り上げは4兆円で、2020年の予想は6兆円でしたが、実際は2倍を記録。2009年の開始当時は27ショップが参加し売上8億円だったのが、12年で1万倍に成長しました。
2019年のW11の宅配数は18.8億個で、2020年は23.2億個にものぼり、日本の年間宅配数43.2億個に比べると膨大な量。これを10日間で配送するために、アリババは700機の航空機をチャーターしました。
近隣のロシアはもちろん、私が顔見知りの日本在住の中国人もW11で大型テレビやサウンドバーを買っています。世界中に届けるため、航空機をこれだけ利用したわけです。ここからも、巨大なECを支えるには物流がいかに大事かわかります。
アリババ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏は、2013年に「1.3兆円をかけて中国の宅配を変える」と明言しました。アマゾンは創業から2012年までに1.3兆円かけたので、対抗意識があったのかもしれません。さらに、2018年の「グローバルスマートロジスティクスサミット」でも1.7兆円を追加投資すると述べ、計3兆円で物流強化に取り組みました。
ただし、アリババが取ったのは、自身でインフラを持たず、トラックや運転手は中国内の5大宅配会社に任せる手段です。彼らは、物流プラットフォームの「菜鳥(ツァイニャオ)」を立ち上げ、宅配事業者と連携を図りました。2018年のサミットに登壇した際にマー氏は「中国国内は24時間、世界中に72時間で届ける」というベンチマークを立て、それを実現すべく取り組みを加速させています。
日本の場合は東京から鹿児島に運ぶだけで1.5日かかるので、さらに広大な中国で実現するのは、かなりの野望だと思います。
一方、アマゾン自身は82機のチャーター機を保有し、世界中で計2100万平方メートルの物流センターを抱え、新たに建設中の拠点もあるほどです。これも相当な規模で、アリババにしてもアマゾンにしても、彼らが物流をいかに重要視しているかがわかります。
日本でもコロナ禍により流通のあり方が変わり、一気に時代が加速した感があります。例えば昨年、紳士服大手の青山商事は400店舗の縮小、160店舗の閉鎖を発表しました。もともと青山理社長は10年後にスーツの需要は4割減ると予測し、カジュアル衣料を展開するなど準備を仕掛けていましたが、コロナ禍でそのスピードが加速したわけです。まさに「タイムワープ」です。