SDGsが実現可能なゴールであるということを理解する例として、ダイバシティとインクルージョン、それからエシカルという言葉についても少しその意味するところを掘り下げてみたいと思います。
最近女性に関する東京オリンピック関係者の発言が大きな話題になりました。これはオリンピック、パラリンピックがダイバシティとインクルージョンいうことを大きなテーマにしているイベントであることから、看過できない問題となったといえるでしょう。今回の一件はダイバシティとインクルージョンがもはや国際的な常識となっているという例かと思います。
ちなみに、ダイバシティは「多様性」ですが、インクルージョンは「包摂」と訳されているようです。包摂は日本語としてちょっとわかりにくいですが、社会的に弱い立場にある人を排除しない、という考えです。
この弱い立場の人を排除しない、という考えを表す重要な英単語があります。それは、「Empathy(エンパシー)」です。つまり「共感」ですね。少なくない日本人がこの単語を「Sympathy(シンパシー)」と混同しがちですが、シンパシーは「同情、哀れ」みというように、イメージとしてはやや「上から」な感じです。「おくやみ」という意味もあるので、ネガティブなイメージもあります。
一方、エンパシーは、SNSなどで誰かの意見が共感を呼んで拡散される、といったときに使われるというとイメージしやすいでしょう。SNSは誰もがフラットな関係、双方向な関係ですね。同じように企業のダイバシティとインクルージョンは、同情やイメージアップではなく、企業や団体でさまざまな立場の人がフラットに共感しあえる組織になることを求めています。
ダイバシティとインクルージョンがSDGsの項目である以上、これも「サステナブル」であらねばなりません。実はすでにダイバシティとインクルージョンが経営的にも有利になるような仕組みが始まっています。
例えば、私の勤めるレノボでは、購買部門が取引先を選ぶ際に、女性やマイノリティの割合が経営陣の中にどのくらい含まれているかをチェックする仕組みがあります。レノボと取引がしたい企業はダイバシティを推進したほうが有利になるというわけです。そしてレノボ自身もダイバシティを徹底すれば、同じような購買基準を持っている企業から選んでもらえるようになるというわけです。
みなさんも「エシカル消費」という言葉を聞いたことがあるかと思います。環境によいシャンプー、人道的に問題のない組織で作られた作物を買う、といった消費行動ですね。
「Ethical(エシカル)=倫理・道徳的な」「Ethics(エシックス)=倫理」といいますと少し前はパワハラや贈収賄をしないといった社員の倫理規定の意味で使われていましたが、昨今ではこうしたSDGsなどに関連した行動をしているか、会社単位でエシカルであるか、という問いの中で使われるようになってきています。
これはサステナブルな行動のほんの一例にすぎません。環境問題も含め、SDGsで挙げられている項目に対しサステナブルな行動をとっているかが、今後は取引や投資の判断になってくるでしょう。実際、日本国内のレノボの取引先からも、サステナブルな経営をしているか?というかなり包括的な報告を求められる機会が最近増えてきています。
また、レノボではESGレポートという160ページからなるサステナビリティに関する取り組みのレポートを毎年発行していますが、これに加え「Diversity and Inclusionレポート」という報告書も近年公開しています。
こうした広報活動を通じてレノボに対し「エンパシー」を感じてもらえれば、レノボ製品を買ってみよう、という消費者の行動にもつながります。さらに、そう評価した投資家に株を買ってもらえます。ダイバシティに力を入れることが会社の発展につながり、ここでもまた「サステナブルな」ループが回り始めるというわけです。
サステナブル、ダイバシティとインクルージョン、エンパシー、エシカル。今回はカタカナ語のオンパレードでしたが、少しは肚落ちしたでしょうか(肚落ちという日本語を最近覚えました)。
SDGsはこうした背景がからみあって出された、われわれ経済界に課せられた行動目標です。皆さんの会社、SDGsにどのように取り組まれていますか?