中毒者が続出の「クラブハウス」に潜む大問題

リスナーは興味のあるroomに参加し、挙手ボタンを押して指名されれば会話に加わることができる。起業家や芸能人が複数で喋っているroomもあり、「ここだけの話」に触れられる期待もある。

ただし、リスナーが増えていくと著名人にとってはプライベートと仕事との線引きが難しくなるだろう。

岩崎さんは、「今後、roomを有料化する機能が出ると言われており、私はコンテンツの公開範囲や価格を決められる『note』の音声版をイメージしている。配信で収益をあげられるなら、芸能人やインフルエンサーにも会話を公開するメリットが出てくる」と予想する。

伊藤社長は「ITやクリエイター業界で、SNSは早く始めたほうが成功しやすいとの認識が共有されており、とにかくやってみようとの雰囲気になっているのでは」と分析した。

Clubhouseはこの勢いで短期間のうちに市民権を得るのか。岩崎さんは「過熱感はそろそろ薄れる」と見る。

招待枠は一時期メルカリに高値で出品されるほどだったが、1月26日朝アプリを使い始めた岩崎さんは、2月3日時点で招待枠が8つに増えた。頻繁にログインしてroomに入っていると増えると思われ、会員になることの特別感はすでにほとんどなくなっている。

ユーザーからは「ご無沙汰だった人と久々に話せた」「オンラインの人たちが集まって有意義な会話ができた」「仕事をしながら流し聞きできる」などポジティブな評価が多いが、毎日5~6時間ログインし、さまざまなroomに入っている岩崎さんは、「仕事をしながら聞いていると、いつの間にかClubhouseの音声が流れていることを忘れている。耳を支配できても、脳はそう簡単に支配できないと感じた」と、スピーカーとリスナーの温度差を指摘した。

DJ部屋、相互フォロー部屋は規約違反

ちなみにClubhouseは以下のような規約を定めている。

・18歳未満は利用できない。
・「本名」での登録が必要。通称がある人は追記できる。アカウント登録後、表示名を変更できるのは1度のみ。
・知的財産権などを侵害するコンテンツは配信できない。
・いやがらせ、差別、脅迫行為などの禁止。

そして、roomでのやり取りの記録は録音だけでなく書き起こし、メモも禁止。記録したければ全員に書面で了承を取る必要がある。Clubhouse側も、roomの稼働中にユーザーから違反行為の通報がない限り、会話を保存しないとしている。

名前を変更しようとすると出てくる画面(画像:岩崎さん提供)

記録を残さない、残させないのは、Clubhouseが「自由に発言できる環境」を優先しているからだろう。

ただし、Clubhouseの運営者がユーザーの規約違反をどの程度チェックし、対応しているかは明らかになっていない。

Clubhouseでは日本人ユーザーによる「DJがお勧めの音楽を配信する部屋」や「フォロワーを増やすための相互フォロー部屋」「Clubhouseでのroomの様子をYoutubeで配信する部屋」ができているが、いずれも規約違反だ。

1月末にはDonald Trump(ドナルド・トランプ)を名乗るアカウントが現れたが、日本人の悪ふざけだったようで、間もなく表示名が変更された(ただし前述したように、変更は1度限りだ)。

岩崎さんは「規約違反は招待した人が4、5代遡って全員アカウントを凍結されるとの話だが、それも確認した人はいない」という。

Clubhouseは2020年3月にアプリをリリースしたばかりのスタートアップで、今年1月に公表された資金調達の目的は、アンドロイドアプリの開発やサーバーの増強、サポート体制の確立のためとしている。