上司の仕事は「つくり笑顔」と「声かけ」で8割だ

コミュニケーションは誰でも上達が可能です(写真:jessie/PIXTA)
長引くコロナ禍で、テレワークを導入する企業も増え、「コミュニケーション不足」によるミスや、社員の心理的安全性も損なわれているのでは、と心配する声が出ている。
株式会社武蔵野を18年連続増収に導き、750社以上を指導してきた小山昇社長の持論は、「コミュニケーションは訓練」。初めからコミュニケーションが上手な人は少ないが、訓練であれば、誰でも上達することは可能だ。
儲かる会社のコミュニケーションの鉄則』を刊行した小山氏が、今からすぐに実行できるコミュニケーション訓練のコツについて解説します。

笑顔は、訓練で身につく

接客サービス業で重要視されるのが、「笑顔」です。「返事と挨拶と笑顔が真っ当にできれば、仕事の8割は成就した」と常日頃から言うほど、わが社は「笑顔での挨拶」を徹底しています。

武蔵野では、「笑顔」を次のように定義しています。

【笑顔】笑顔は無料でも、無限の価値がある。笑顔は相手の人に対する好意・歓迎の意思表示です。無愛想な表情では心が伝わらない。笑顔は、最も価値のあるサービスの1つです。練習しだいで誰でも美しい笑顔になれます。どうしてもうまくできない人は、職業を替えたほうがよい。(小山昇『改訂3版 仕事ができる人の心得』CCCメディアハウス)

私の笑顔も、「練習」によって身につけたものです。今から40年以上前、私は「社長の教祖」と称された経営コンサルタント、一倉定先生に師事していました。一倉先生は、別名「炎のコンサルタント」と呼ばれ、厳しい指導で知られていました。

とにかく容赦がない。利益だけを追求する社長に対しては、烈火のごとくしかり飛ばします。「これは講義ではない、落雷だ」と恐れおののく社長もいました。

そんな怖いものなしの一倉先生から、「キレすぎて危ない」「あんたはカミソリみたいな人だ。そばを通るだけで傷がつく。ナタぐらいになると、ちょうどいい」と指導されたのが、小山昇です。

当時、武蔵野の幹部16人中5名は、元暴走族でした。それも特攻隊長、親衛隊長、遊撃隊長といった役職付きの強者です(笑)。

そんな猛者たちが「やくざより怖い」と恐れたのも、小山昇です。彼らが人に迷惑をかけるのは、「自分が評価されていない」と思うからです。私は彼らの存在を認め、関心を持って接することで、彼らは変わっていきました。

一倉先生に「切れ味鋭くなくていい」と指摘されてもカミソリを研ぎ続けていた私が、ある人のひと言をきっかけに、「カミソリ」の異名を返上しました。ある人とは、飲み屋のおねえさんです(笑)。

彼女から、「どうしていつも苦虫をかみつぶしたような顔をしているの? そんなんじゃ、モテないわよ!」と指摘され、目が覚めました。

「オレがモテない原因はそれか!」。そして、「つくり笑い」を覚えた。「社員を怖がらせないため」ではなくて、「自分がモテるため」という不純な動機で笑顔を覚えたわけです。

けれど不思議なことに、心を込めずに「つくり笑い」を続けているうちに、自然と「本物の笑顔」になってきて、社員やお客様と親密なコミュニケーションが取れるようになったのです。

愛想笑いやつくり笑いは、偽物の笑顔かもしれない。けれど、最初は偽物でもいい。何百回も何千回も続けていれば、偽物は本物に変わります。「形から入って心に至る」です。

元々は、人前で話すのが大の苦手だった

かつての私は、「人前で話す」ことも苦手でした。

子どものころは吃音(言葉がスムーズに出ない状態)に悩まされ、同じ音を繰り返したり、引き延ばしたり、つまったりしていました。オマケに赤面恐怖症でした。