みなさんもおわかりのとおり、本来は一度や二度の失敗で「話すことが苦手」という強迫観念を持つ必要はまったくありません。
しかし「話すことが苦手」と思い込んでいる人の多くは、数少ない失敗や心ない誰かの指摘が原因となって、話すことに苦手意識を持ってしまっています。
そんな人も、自分をラクに楽しく肯定できれば、確実に話し方はうまくなっていきます。また、人間関係も今よりずっとラクに、良好になっていきます。
先日、こんな相談を受けました。
「知り合いに住んでいるところを聞いたら、『そういうことを聞かれて嫌な気持ちになる人もいるんだから、安易に聞いちゃダメだよ』と言われました。それ以来、誰にも住んでいるところを聞けなくなってしまいました」
人によって感じ方はそれぞれですから、相手の言い分にも一理あるでしょう。見方を変えれば、「プライベートの境界線は人によって違うから、何を言うにも慎重に」と、苦言を呈してくれたとも取れます。
しかし、一方で、私はこうも思うのです。今まで、おそらく何百人と出会ってきた中で、たった1人から言われたことを気にして萎縮してしまうなんて、もったいないな、と。
ひょっとすると、あなたも一度や二度の言葉の行き違いや感覚のズレによって傷つき、自信を失い、それが元で話すことへの苦手意識が芽生えてしまったのではないでしょうか。
ここで、私は断言します。
一度や二度の注意や失敗くらいで、会話を怖がる必要はまったくないのです。「あ、この人はこういう話題は嫌な人なんだな」と受け止め、その人に同じ質問をしなければいいだけの話なのです。
では、過去の苦い経験で失ってしまった自己肯定感を取り戻すには、どうしたらいいのでしょうか。
話すことを通じて失った自己肯定感は、やはり話すことを通じて取り戻すのがいちばんです。そこでキーワードになるのが、
「全肯定」
です。
「話している相手を決して否定しない、そしてあなた自身も否定させない」
ということです。
つまり、相手との間に「否定のない空間」を作るのです。
人は、自分を肯定してくれる人を肯定するようにできています。そこであなたが相手を否定しなければ、相手もあなたを否定しなくなっていきます。
「相互全肯定」の状態です。
その体験の中で、自然と自己否定感が薄れ、自己肯定感が高まっていくのです。相手を肯定すると同時に、あなた自身が「否定のない空間」に身を置くことが大切なのです。