イタリアン「カフェ ラ・ボエム」などを展開するグローバルダイニングの長谷川耕造社長も「(今の行政からのサポートでは)20時までの営業では事業の維持、雇用の維持は無理」との見解を自社サイトに掲載した。同社も一部店舗を除き、原則通常営業を続ける方針だ。
コロナ禍が1年近く続き、大手外食チェーンでも資金繰りの懸念が膨らむ。ワタミの渡邉会長は、「(今後、飲食店が)生き残るか生き残らないかは、とにかく銀行次第だと考える。これまで私たちは無借金の企業だった。それがもう、銀行の融資なくしては生き延びられない状況になっている。借金していた通常の企業は圧倒的に苦しい」と切実だ。
売り上げ減による収益悪化と借り入れ増により、自己資本比率が大きく落ち込んでいるところも少なくない。外食産業は損益分岐点が高く、売り上げが1割落ち込むだけで赤字になりやすい。保有する現預金も少なく、コロナ禍の長期化はまさに致命傷となる。
ファミレス大手サイゼリヤの堀埜一成社長は、「足元では、金融機関が飲食店の債務者区分引き下げなどを行ったケースも出てきている。(居酒屋企業などを中心に)資金繰りに窮する企業も出ている中、今(業界として)1番恐れているのが大量の雇用を抱えるチェーンの倒産」と、大手であっても厳しい実情を指摘する。
さらに外食企業の不振が続けば、食材を供給する卸売業者や生産者にも深刻なダメージを与える。ある飲食店卸売業者は「外食の苦戦は、われわれの業績悪化に直結する」と嘆息する。時短要請に応じた飲食店の取引先には給付金が支給される方向だが、法人には最大40万円、個人事業主には20万円と心もとない。
ファストフードチェーンや人気店を除くと、昨年の緊急事態宣言以降、外食業界の売り上げの戻りは緩慢であり、閉店や倒産が相次いでいる。今回の緊急事態宣言の発令を受け、「魚民」などを展開する居酒屋大手モンテローザが、都内の店舗数の約2割に当たる61店舗の閉鎖を発表した。外食業界は従業員を多く抱える業界であるため、経営不振が大規模な雇用喪失に直結することには注意が必要だ。