自己肯定感が低い人の「呪い」を解く1つの方法

他人と比べられて劣等感を持つ人が、その呪縛から解放される方法とは?(写真:JADE/PIXTA)
「日本人は自己肯定感が低い」という事実がさまざまな調査で明らかになっています。自己肯定感が低い原因は人それぞれですが、なにかにつけて「他人と比べてしまう」習慣は、その大きな要因の1つではないでしょうか――。
ベストセラー『死にゆく人の心に寄りそう』の著者である、看取りの僧侶・玉置妙憂さんの新刊『心のザワザワがなくなる 比べない習慣』から一部抜粋し、解説します。

子どもの頃に比べられた惨めさがいつまでも消えない

社会の中で生きていると私たちはさまざまなことで比べられ、優劣をつけられながら生きています職場での給料の査定や昇給などは当然のこと、子どもの頃からまわりの子と比べられながら育ってきました

私は看護師として、僧侶として、死にゆく方の心に寄りそう活動をしています。最近では元気で生きている方からも、よりよく生きるための人生相談、悩み相談などをお受けする機会も増えてきました。その中で、30代後半の女性からこんな相談を受けました。

「私、自信がないんです」

子どもの頃、そそっかしくて忘れ物が多く、運動も勉強も苦手でした。親にも教師にもあきれられ、いつもお姉ちゃんと比べられては叱られてばかりいました。その後、一生懸命努力し、人並みの大学を出て、いい職場に就職したものの、心の中には叱られてばかりだった過去の自分がいて、いつまでも自信が持てずにいます

「いまでも、まわりの人と比べて自分はちゃんとできているか、ちゃんと人並みかどうかが気になってしまうんです」

比べられた経験がいつまでも心の中にトゲのように残っていて、何かを決めるときや評価されるときも自分が及第点に達しているかどうかばかりが気になる。子どもの頃、「比べられて悲しかった」のに、大人になったいま、結局他人と比べることで自分の価値を判断してしまう――そんな方は、実はとても多いそうです。

自分のウィークポイントを振り返って「気づく」こと

わかっているのに比べてしまう、そんな私たちがいろいろな痛みや苦しみの呪縛から離れる第一歩は「気づく」ことです。

「気づく」ためには、まず自分の心をじっくりと深掘りすることが大切です。

私たちは、言葉もうまく話せない幼児の頃から感じてきたさまざまな感情を意識下にため込んで生きています。そして、その積み重ねが、現在の私たちの思考の癖や思い込み、物の捉え方などにも大きな影響を与えているのです。

例えば、新型コロナウイルスの流行で生まれた“自粛警察”という現象もその1つです。“自粛警察”と呼ばれる人たちは、マスクをせずに外出する人や店を閉めていない飲食店やライブハウスに苦情を寄せたりと、「自分は我慢させられているのに、他人がしていないこと」が許せないのです。

そのように自分に直接関係ないことでも、周囲の言動に過剰に反応しがちな人は、小さな頃からの無意識の集積が影響しているかもしれません。

自分の心を深掘りしていく際にヒントになるのが、「生育歴」です。

「生育歴」とは、子ども時代からいままでを振り返り、自分が親からどう育てられてきたか、どんな境遇で育ってきたか、どんな言葉をかけられてきたかなどを振り返ることです。もちろん、きれい事だけでなく、自分のウィークポイントやマイナス面にも向き合う必要があります。

「生育歴」を振り返っていくと、何気ない言葉やささいな経験からも「自分がどこで痛みを感じてきたか」を認識することができます自分がこれまで受けてきた悲しみや苦しみを認識することで、自分の思考の癖や思い込みの傾向を捉えることができるのです。