目線が下がり、背中が丸まっていたり、肩に力が入っていたりすると、肺が圧迫され、きちんと横隔膜を上下させた深い呼吸が行えない状態になってしまいます。息苦しさを感じるようなときも、呼吸が浅くなっている可能性があります。
これらの修正方法はいたって簡単。顔を上げ、胸を張る。そして大きく深呼吸をすることです。深呼吸をするときは、口から大きく息を吐き、次に鼻から息を吸うことを繰り返してみてください。ポイントは、最初にできるだけ大きく長く吐くこと。吸うときはできるだけ胸を開き、空気をたくさん取り入れるようにしてください。
それを3~4回繰り返します。息とは自らの心と書きます。呼吸と心がつながっていることも意識してみましょう。たったこれだけでも驚くほど気持ちは前向きになります。
2つ目と3つ目のポイントは誰もが知っている「腕立て伏せ」で説明しましょう。腕立て伏せのやり方がまったく想像できないという方は、あまりいないと思います。でも、正しいフォームで行っている方はほとんどいません。
まず、みなさんに知ってもらいたいのは腕立て伏せの目的です。腕立て伏せで強化したいのは、胸の筋肉(大胸筋)。そのため、腕立て伏せでは大胸筋を意識しながら大きく収縮させ、何よりも大胸筋に効いていることを感じることが大切です。
そこでポイントとなるのが、手を置く位置。これを誤ると違う筋肉(主に上腕三頭筋)へ負荷が分散してしまうため、ラクなトレーニングになってしまいます。人間は無意識につらいことを避けようとするので、体の使い方が上手な人ほど、腕立て伏せを体全体で行ってしまい、結果的に回数へ目的意識が向かいがちです。
筋トレもビジネスと同じで、目的を見失わないことがとても重要です。正しいやり方で腕立て伏せを行えば、人によってはたったの5回でも十分な効果が得られます。決して「回数の問題ではない」ということをぜひ実感してみてください。
最後に筋トレそのものについてです。常々わたしは「筋トレはマインドフルネスだ」ということをみなさんにお伝えするようにしています。わたしたちは、「いま」という瞬間を生きています。しかし実際には、過去や未来のことを考えてしまい、「心ここにあらず」の状態で過ごしていることが多いのではないでしょうか。
とくに、常にスマートフォンが手元にあり、いつでもインターネットとつながっている現代社会では、絶えず情報に触れているため、わたしたちの意識が「いま」に置かれていることは非常に少なくなりました。
このような「心ここにあらず」の状態から抜け出し、心を「いま」に向けた状態のことを「マインドフルネス」と言います。そして、「いま」に意識を置くことができると、幸福感を高めることができると言われています。
マインドフルネスの世界では、瞑想や座禅などで「いま」に意識を向けますが、実はこの マインドフルネスの状態をつくるのに有効なのが筋トレだと、わたしは考えます。
なぜなら筋トレは、これまで紹介してきたように、鍛えたい筋肉に意識を集中しながら行うからです。筋トレをしているときに「明日の仕事、嫌だな」と思うことはありません。鍛えたい筋肉に集中し、「この短い時間を使って、いかに効率的に筋肉に負荷を与えるか」を考えています。つまり、わたしにとって筋トレという作業自体が、マインドフルネスなのです。
先ほど紹介した腕立て伏せもあまり難しいものではありません。肝心なのは自分に合ったペースで、鍛える筋肉に意識を集中して行うこと。自宅でも職場でもスキマ時間でOK、筋トレがあなたの人生を豊かなものにしてくれるかもしれません。