猫が飼い主の顔色を読んで振る舞っている証拠

このような実験から、「猫もエピソード記憶をもつ」ということがわかりました。

実はこの実験は犬でも行われたのですが、結果は猫とほとんど一緒でした。

犬も猫もお留守番中や、ふとした瞬間に「昨日飼い主さんと遊んで楽しかったなあ」「さっきもらったおやつ、おいしかったな」などと思い出しているのかもしれませんね。

また、エピソード記憶は、未来に向けた想像力との関連も指摘されています。

もしかしたら窓の外や飼い主を見つめている猫は、これまでの猫生のいろいろな回想をしたり、「明日、あのおやつをもらえたらいいなあ」と思ったりしているのかもしれません。

猫と暮らしていると、猫の自由奔放な行動に悩まされることもあります。

そこで、日々の暮らしから疑問が湧いてきました。

猫は人の表情(顔色)を読むのでしょうか? そんな疑問に答えた研究があります。

2015年にアメリカの研究者が「猫は人の感情を区別できるのか」についての論文を発表しました。

実験はすごくシンプルです。

飼い主と知らない人がそれぞれ、楽しそうな表情/怒った表情を表出し、その際の猫の行動を観察します。

この実験のポイントは、声の効果を除外するために、表情のみを表出するところです。
怒り声を出してしまうと、本当に猫が表情を読んだのか、声を手掛かりにしたのかがわからないからです。

知らない人の表情には関心がない

その結果、猫は飼い主が楽しそうな表情をしているときによく接近し、猫自身ポジティブな行動(耳を前に向ける、リラックスした姿勢をとるなど)をよく見せることがわかりました。

一方で、知らない人が楽しそうな表情を見せても怒りの表情を見せても、猫の行動は変化しませんでした。大変おもしろい結果です。

おそらく猫は、人の表情を一般化して理解してはいないのでしょう。

「飼い主さんがこんな感じの顔をしているときは、近寄っていくといいことがある!」と個別の学習をしていると考えられます。

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そのため、知らない人が同じ表情を見せても、猫にはなんのことかわからなかったのかもしれません。もしくは、知らない人に対しては親しくしてほしくなかった可能性もありますが……。

犬の場合、たとえ知らない人の刺激を用いてもポジティブな表情とネガティブな表情を区別できるといわれています。犬はより一般的な「人の表情の理解」が見られるといってもよいのかもしれません。

犬に対して猫は、飼い主の表情を地道に学んでくれているとすると、とってもかわいい結果だなと思います。