怒ってしまうことへの不安はもうないのかと尋ねると、山本さんは「怒ることはありません」と断言した。
「なぜなら、怒らないと決めたからです。万一、怒ってしまったら謝る。怒ってしまうかもしれないと恐れるより、怒らない自分を考える。覚悟を決めた、とでも言いますか。怒りは感情だから仕方ないって自分を許していると、怒れちゃうので。それでも、心がざわざわすることはあるんです。そんなときこそ、マイ・テーマである『傾聴』を思い出します。人の話って、ちゃんと聴けば聴くほど怒る暇がないんですよ。怒ってしまうなら、それは相手より自分に集中しているからだと思いますね」
妻から面と向かって「変わったね」と言われたことはない。それでも、妻は「脳の細胞が入れ替わったみたいに変わりました」と栗原さんに伝えていたことを間接的に聞いた。
変わったと決めるのは自分じゃない――山本さんはそう自戒しつつも、足取りは軽そうだ。
「人生って、ほとんど人間関係でできているじゃないですか。だから、ステップで学んだことは家族も仕事もすべてにいい影響をもたらしています。学び続けることで、これから死ぬまで人を傷つけることなく生きられると思うと、そんな最高なことないですよ」
(取材:ニシブマリエ=フリーライター)