リクルート住まいカンパニーが毎年発表する「SUUMO住みたい街ランキング」の2020年版によれば、関東の大手私鉄沿線で「住みたい街」の上位30駅には、横浜、中目黒、表参道、自由が丘、二子玉川、武蔵小杉、たまプラーザ、海老名、三軒茶屋といった東京の西側または神奈川県の駅がずらりと並ぶ。
それに比べて埼玉県の駅はJRを含めても大宮、浦和、さいたま新都心だけ。東京や神奈川の駅の数と比べると見劣りする。プロ野球チームも遊園地もある所沢が住みたい街の上位に入っていないのは、不思議な感じすらある。
グランエミオ開業後も所沢は変貌を続ける。今後所沢で控える西武の大型再開発は、所沢駅西口にある西武鉄道の車両工場跡地が舞台となる。東京ドーム広さ2個分くらいの広い敷地にタワーマンションや商業施設が建設され、多くの人が所沢に移り住むはずだ。
人が増えるだけでなく、街のあり方も変わる。西武ホールディングスの後藤高志社長は、「これまでの所沢はベッドタウンだったが、今後はリビングタウンに変わる」と話す。その理由はもちろん新型コロナウイルスの感染拡大だ。テレワークや在宅勤務の進展で東京のオフィスに通う必要性が減るからだ。所沢は「働く、暮らす、遊ぶ、学ぶ」という生活の4要素をすべて満たす街になると後藤社長は考えている。
このように所沢の様相が大きく変わろうというときに、まだダサイタマと言われ続けていいのだろうか。
住みたい街の上位に横浜、中目黒、自由が丘、二子玉川、武蔵小杉、たまプラーザ、三軒茶屋と東急電鉄の駅が多数入っているのは偶然ではない。街のイメージ向上に鉄道会社が果たす役割は小さくない。これまでも西武は所沢の開発に大きく関わってきたが、今後は沿線イメージ向上にも力を注ぐべきだ。
西武と並んで埼玉県を代表する私鉄である東武鉄道にも同じことがいえる。東武は伊勢崎線春日部駅がある春日部市と8月20日に包括的連携協定を締結した。連携・協力事項の筆頭に挙がるのは「シティプロモーションの推進、鉄道と沿線価値の向上」である。春日部駅付近で今後行われる連続立体交差事業に関係する取り組みに加え、春日部駅の知名度向上に関する施策も行われるはずだ。
イメージアップに特効薬はない。西武も東武も、「埼玉県民が誇りを持てる沿線にする」くらいの気概を持って、知恵を絞り、地道な努力を続けていくしかない。