「飽きられる文章」と「読まれる文章」決定的な差

「共感」を入り口にする

「共感」はものすごく大切な要素です。お笑いの世界でも「あるあるネタ」をやるとだいたいウケます。いつの時代も「あるある」は強い。人は「共感」を求める生きものなのでしょう。

飲み会の帰りに微妙な知り合いと一緒に帰るのがつらいから「ぼく、コンビニ寄って帰りますね」って言ったら「あ、じゃあ私も」ってついてきちゃって、うわああってなる。

これは「人見知りあるある」です。「あるある」がうまくハマると「あ、この人、自分と同じ感覚だ」と読み手に思ってもらえます。「この人、すごい私のことわかってる」と。すると信用してもらえるのです。

おもしろい文章を書きたいのであれば、日頃から「あるあるネタ」をストックしておくといいかもしれません。「こういう会話、よく聞くよな」「こんな人、けっこう多いよな」と思ったら、ささいなことでもいいのでメモしておきましょう。

ぼくが本を編集するときも、この「共感と発見」のバランスを意識しています。本の場合は「共感:発見」が「6:4」だったり「5:5」だったりしますが、とにかく「発見だらけ」の本は疲れるし「共感だらけ」の本は飽きられます。そのバランスを考えてつくるわけです。

似たようなことで、「読者の期待どおりの部分」と「期待を超えた部分」をバランスよく配合することも意識しています。

みんな「ホリエモンにはこれを言ってほしい」「オリラジの中田敦彦さんにはこれを言ってほしい」という「期待」を暗に持っています。堀江さんには「電話には出るな」「会議は無駄だ」「ネクタイなんてやめろ」と読者は言ってほしい。

その期待に素直に応えてあげる。これも「おもしろさ」につながります。水戸黄門で印籠がいいタイミングで出てくるように、予定調和にも価値があるのです。

ビジネス書を読んでいると「あいさつをしたほうがいい」という項目が出てきます。そんなことは昔から言われつくされているわけです。著者のなかには「いまさらこんなこと言っても、コンテンツなんかにならないんじゃない?」と言う人もいます。でも、それをあえて言うことは、読者の期待に応えることになります。

「その人が言う」ことが求められているなら、それは立派なコンテンツなのです。

ビジネス書の8割くらいはすでに言われていることです。そこに新鮮さや奇抜さはないのかもしれません。ただ、それを読むことで安心感を抱く人も多くいるわけです。自己啓発書を読む人は「夢は叶うよ!」と言ってほしいから読みます。予定調和を求めている。新しいことしか書いていないような本に人は反応しづらいのです。

「共感8割、発見2割」の法則は人間にも当てはまりそうです。

まったく共通点のない、共感もできない奇人変人には、怖くて近寄れません。「見てるぶんにはおもしろいけど、仲よくなりたいとは思わないな」という人が大半だと思います。でも、8割くらい自分と一緒で、2割くらい自分と違う部分があったり、変だなと思うことがあれば「おもしろいな」「この人と仲よくなりたい」と思うはずです。

逆に自分とまったく同じような人は、仲よくはなるかもしれないですが「おもしろいな」とは思わないでしょう。

文章も完全に新しい情報だらけだと「超奇抜な人」になってしまいます。意外と人気にならない。8割くらい自分と同じことを言って「わかるわかる」「あいさつ大切ですよね」「夢、叶いますよね」と共感させておいて、残り2割で「人脈はクソだ」など斬新なことを言うと「これは新しい!」と思ってもらえるのです。

「完全に新しいもの」など書かなくてもいいのです。結論は一緒でもいい。エピソードが違えば新しいものになりますし、「誰が書くか」ということでメッセージは変わってくるのです。