「脱サラ」で失敗する40代・成功する40代の差

「コンサル独立」を後押しする3つの理由

私は、最近の独立開業を巡る環境変化について、以下3点を説明しました。

1:補助金バブルの恩恵
近年、公的分野は活況を呈していましたが(「コンサルばかり儲けさせる『国の補助金』の問題点」参照)、今回のコロナでさらに仕事が増え、バブル化しています。

各種補助金や緊急融資には審査業務がつきものですが、政府・公的機関の手が回らず、全国の中小企業診断士が審査業務などを請け負っています。公的分野を中心に活動するなら、当面コロナによる“補助金バブル”の恩恵を享受することができます。

2:専門職のアウトソーシング化
今後、民間企業でもコンサルタントの起用が増えます。今回コロナで企業経営者は、休業してもクビにできず、給料を払い続けねばならない正社員の重荷を思い知らされました。

現在、企業は単純・周辺的な業務を外部人材に委託していますが、今後は専門的な業務や経営企画など中核的な業務でコンサルタントを積極的に活用するようになるでしょう(「正社員激減』コロナ不況が招く働き方の大変革」参照)。

3:ライバルの減少
パート・派遣などの雇用不安が深刻になり、“サラリーマン最強伝説”が復活しています。そのため、まさに小泉さんのように優秀な企業内診断士が独立開業を躊躇するようになっています。これはライバルのプロコンが減ることを意味し、独立開業した後の競争を勝ち抜くためには朗報です。

よく「本当に実力があれば、どんなに悪い環境でも成功する」「死ぬ気で頑張れば必ず道は拓ける」と言い切る人がいますが、そうでしょうか。

全体の1割はどんなに環境が悪くても成功し、1割はどんなに環境が良くても失敗し、残り8割はその時の環境次第で成功したり、失敗したりする、というところでしょう。独立開業に限らずビジネスでは、タイミングが大切です。

コンサルタントに関しては、平常時と比べて成功確率が少し高まったというだけで、成功するのが難しいという事実は、大きくは変わりません。

小泉さん:独立開業を躊躇するどころか、ベストのタイミングということですね。
筆者:ええ、そういうことになります。ところで、小泉さんの現在の年収は?
小泉さん:900万円弱です。
筆者:奥さんは?
小泉さん:フルタイムで働いていています。年収は450万円くらいでしょうか。
筆者:住宅ローンは?
小泉さん:日沖さん、いろいろと聞いてきますね(笑)。まだ少し残っていますが、退職金が入るし、親からの援助もあるので問題ありません。
筆者:お子さんは1人でしたっけ?
小泉さん:はい、大学1年生です。
筆者:諸々の事情を伺うと、独立開業して失敗しても、食べていく分にはそんなに心配なさそうですね。
小泉さん:ええ、まあそういう感じです。

独立前に気にしたい「金銭的な備え」

独立開業の相談を受けたら、失敗した場合への金銭的な備えがあるかどうかを必ず確認しています。相談者の今後の人生を心配して、というのもありますが、金銭的な備えがあるかどうかが、コンサルタント業の成功・失敗を大きく左右するからです。

『独立する! 中小企業診断士 開業のコツ60 』(中央経済社)書影をクリックするとAmazonにジャンプします。

もし失敗したら一家離散というギリギリの状態だと、食べて行くために「安い仕事でも、不得意な仕事でも、(場合によっては反社会的な仕事でも)何でも引き受けよう」となります。これでは、お客様を満足させる良い仕事をできず、自分のブランドも定まらず、長い目で見て成功することはできません。

逆に、失敗しても最低限食べて行くことができるなら、心に余裕ができ、自分の得意な分野に絞って受注し、腰を据えて取り組むことができます。結果として、良い仕事をすることができ、ブランドが確立され、成功率も高まります。もちろん、背水の陣を敷いて死ぬ気で頑張ったら大成功したというケースもあり、あくまでも確率の話です。