ハッキリ物言って嫌われる人・好かれる人の差

部下などを叱るとき、相手をできるだけ嫌な気持ちにさせずに伝えるには? (写真:msv/PIXTA)
世の中には、ハッキリものを言って嫌われる人と、好かれる人がいます。その違いは、その人の「キャラクター」や伝え方の「センス」だと思われがちですが、放送作家の野々村友紀子氏は、違いは事前の「準備」であり、「スキル」であると言います。
相手をできるだけ嫌な気持ちにさせずに、自分の考えや気持ちを伝える実践的コミュニケーション術を、元・芸人であり、切れ味鋭いコメントでさまざまなメディアで活躍中の野々村氏が、新刊『ハッキリものを言って嫌われる人、好かれる人の伝え方』をもとに解説します。

叱りたいが、嫌われたくない

最近、街で声をかけられると、よく言われる言葉があります。

「いつもテレビでなんでもズバズバとものを言ってくれて、スッキリするわー」
「歯に衣着せぬ発言、『うらやましい~!』って、見ています」

自分ではそういうつもりはないのですが、世間ではなんだかこんな感じで、野々村はハッキリと何でも言う人、と思ってもらえているようです。

しかし、そもそも私は、自分の言いたいことをすんなり言えるタイプではありませんでした。小さい頃はむしろ口ベタで、極度の引っ込み思案。仲のいい、ひと握りの友達以外とは、話すことすら苦手にしている子でした。

だから、私がハッキリとした物言いをしているように見えるとしたなら、その理由は、もともともっている「センス」とか「キャラクター」なんてものではありません。実は、けっこう「準備」をしているかも。キツめのことを言い放っても、嫌われたり、叩かれたりしないように、考え抜いた、いくつかのパターンを準備しているのです。そう、嫌われないパターンを用意してからの、ズバッと! なのです。

例えば、皆さんは、会社の勤続年数そこそこの部下や後輩が、「とっても雑な仕事」をしていたら、どのようにして注意しますか?

彼(彼女)に、お客さんに提出するプレゼン資料のプリントアウトを頼んだとしましょう。「できました!」と、その子から自信満々に渡された数十枚の紙の資料の印刷が、ズレまくっていた。最後に紙をまとめるときに、「トントン」とそろえた形跡もなく、紙がズレたまま、ホチキスで止められていたとしたら――。

「なんやねんコレ、やり直し!!(怒)」って言いたくなりますよね。ズバッと叱りつけたい気持ち、痛いほどわかります。

けれど、いまどきそんな言い方をしたら、即、パワハラ認定。そこまでいかずとも、頭ごなしに叱られたら、言われた相手は心を閉ざしてしまう可能性が大でしょう。後から「あの人はすぐキレる」と陰口を叩かれたり、ツイッターでぼろくそ言われるのは避けたい、ですよね?

だからといって、黙っていたらこちらのストレスがたまる。それ以上に、まずい仕事をしている部下を野放しにすることになります。相手の成長の機会をつぶすことになるし、周囲やお客さんに迷惑をかけることになってしまいます。

たったひと言で十分伝わる

私ならそんなとき、こんなパターンで返します。

「雑っ!」

ひと言、ズバッと、です。怒っていないし、キレていません。単にただただ驚いているのです。「雑すぎる仕事」という「ボケ」への「つっこみ」と言ってもいいでしょう。

相手を叱ったのでもなく、ただその仕事っぷりを見て、私が驚いたわ、という感想を「雑っ!」と表明しただけです。言葉の調子は強くても、相手への非難ではありませんから、相手も周囲もそこまで嫌な気持ちにはなりません。しかし、言いたいことは十分に受け手には伝わります。「そうか! しまった、雑だったか」と。