4月末からは、グーグルミートを法人向けだけでなく、個人向けにも提供し始めた。同社はビデオ通話やチャット機能を持つ「ハングアウト」を2013年から展開しているが、法人向けは機能を拡充したグーグルミートや「Google Chat(グーグルチャット)」に順次移行する方針を示していた。ソルテロ氏は「個人向けのハングアウトも2020年中に終了し、ミートとチャットに移行する」と明らかにした。
コロナ禍では企業だけでなく、個人の間でもビデオ通話が大きく広まった。グーグルが従来提供するスマートフォン向けビデオ通話アプリ「Duo(デュオ)」は、「世界中で記録的な(利用の)伸びをみせている」(ソルテロ氏)という。
グーグルはこの5月、これまでバラバラの部門に散らばっていたデュオやミート、スマホOS「Android(アンドロイド)」に搭載されている電話やショートメッセージ(SMS)といった個人向けのコミュニケーションアプリ事業を1つの事業部に統合した。
グーグルはソーシャルメディアの「Google+(グーグルプラス)」やチャットアプリ「Allo(アロ)」などで撤退に追い込まれるなど、コミュニケーション分野は不得手とされてきた。新部門の責任者も兼任するソルテロ氏は、「グーグルのサービスのユーザーが、そのときどきのコミュニケーションに最適なツールを使えるようにするための明確な道筋を見つけようとしている」と話す。
ズームに待ったをかけるのは、グーグルだけではない。6月4日、アマゾン・ドット・コムと、ビジネスチャット大手のスラック・テクノロジーズがビデオ会議サービスなどの領域で提携すると発表した。
スラックは従来、ビジネスチャットでつながる人同士のビデオ通話機能を独自開発してきたが、今後はアマゾンのクラウド子会社であるアマゾン ウェブ サービス(AWS)のビデオ会議サービス「Amazon Chime(アマゾンチャイム)」を技術の基盤に採用し、その分の開発人材をほかの分野に充てる方針だ。
スラックは大半のビデオ会議サービスと連携しているため、チャットの画面上で簡単なコマンドを入力するだけでズームなどのビデオ会議を始められる。だが足元の需要を鑑みて、スラック自身の機能としても拡充に踏み切った形だ。
一方、アマゾンチャイムはビデオ会議市場での存在感が低く、アマゾンは全世界1250万人以上のユーザーを抱えるスラックに基盤を提供することで成長を狙う。
ズームの急成長がアメリカのテックジャイアントたちの背中を押した。グーグル、アマゾン・スラック連合、そして全世界に7500万人以上のデイリーアクティブユーザーを抱えるビデオ会議・チャットサービス「Teams(チームズ)」を擁するマイクロソフトも黙ってはいない。
わずか数カ月で一躍世界の注目市場となったビデオ会議サービス。大競争時代はまだ始まったばかりだ。