就職・採用の状況はどうなっているのか?
5月28日の配信記事「コロナ禍が新卒採用へ与えた影響の深刻度」では、採用日程が大幅に遅れ、オンライン対応が急務になった実態をHR総研が実施したコロナ禍に関するアンケート調査をもとに紹介した。
調査は複数回行っており、初回は2020年2月13~18日、2回目は2月28~3月4日、3回目は3月27~31日に実施。3回目の調査時期には、東京オリンピック・パラリンピックの延期が決定され、小池都知事が自粛要請会見を行い、コメディアンの志村けんさんが亡くなった。少したるみがちだったコロナ禍への警戒感が急激に高まった頃である。
それから2カ月が経った。この間、4月7日に緊急事態宣言が発出され、東京など5都道県が5月25日に解除されるまで続いた。第4回目のアンケート調査は緊急事態宣言がすべて解除される直前、5月15~20日に行っている。感染状況が落ち着き、自粛解禁が待望されていた時期だ。その内容を紹介していきたい。
新卒採用へのコロナ禍の影響で最も顕著なのは、スケジュールの遅延だ。採用イベントの典型は合同企業説明会だが、大型施設に多数の企業がブースを出し、多数の学生がひしめきあう。企業は学生を呼び込み、学生は熱心に人事の話を聞いて質問する。
こういう「3密」イベントはすべて中止になった。そして、リアル面接も実施が見送られた。「すべての採用活動をオンライン化で行う」という流れが緊急事態宣言によってできあがった。
3月27~31日にHR総研が実施した調査に企業の困惑は表れ、「採用スケジュールの遅延」の期間予測では「1カ月以上の遅延」を予想する企業が81.6%と8割を超えていた。
今回の調査(5月15~20日)ではこの傾向がより顕著になっている。
「1カ月未満」の回答は1割強にとどまり、「1カ月以上」が9割近くを占め、前回調査より10ポイント近く増えている。ボリュームゾーンは「1カ月」28%、「1カ月半」17%、「2カ月」21%だが、「3カ月以上」の大幅遅延を予想する企業も17%存在する。
長期の遅延を予想する企業が多いのは当たり前だ。企業の採用ステップの第1段は「母集団形成」だ。マイナビ、リクナビなどの就活サイトからのプレエントリー学生、および合同企業説明会で企業ブースを訪れた学生が母集団を形成する。
もちろん昨年夏のサマーインターンシップから学生と接し、選考ステップとした企業もかなりある。就職情報会社各社は月次の内定率調査を実施しているが、いずれの調査も4月段階で5割前後の内定率となっていた。しかし、4月以降は採用ステップが停滞したことで、そこから先は内定を出せない企業が増えた。
「大規模な合同企業説明会がなく、母集団形成に難がある」(301~1000人・メーカー)
「他社企業の選考遅延による内定承諾タイミングの遅れ」(301~1000人・サービス)
「最終面接(対面)の実施の遅延」(300人以下・メーカー)
今回の調査によれば、内々定出しの開始時期は今年の「5月後半」まではいずれも数%にとどまっている。例年の内々定出しは3月から増えて4月と5月にピークを迎えるが、今年は違う。「3月前半」は10%に近いが、ずっと低いままだ。
そして、6月から7月前半までの1カ月半に内々定を出し始める予定の企業が多い。そして7月後半から8月にかけては少なく、残りは「9月以降」という回答だ。