他人と働くというのは相手を信頼して任せることでもある。だから、「会ったことがなくとも信頼して仕事を任せてもらえる人」でいることが、これからのキャリアを考えるうえで非常に重要になる。
そのため、内定や依頼を出す前に本人の能力や性格などが実態と合っているか、前の職場などに確認を取る「リファレンスチェック」(経歴照会)を行う会社が増えている。
相手が信頼に足る人間なのか、今までは2~3回の面接を経て判断していたのを、過去にその人が一緒に働いた人から評判を聞いて採用の可否を判断する。「back check」というリファレンスチェックを簡単・低価格でできるサービスも登場しており、採用前に評価を確認するのはこれからの転職市場のスタンダードになると考えている。
リファレンスチェックはアメリカでは以前から行われていた。Twitter社は日本でも最終面接時に本人ではなく、候補者が勤めている上司や同僚と電話面談を実施しているという。候補者の働きっぷりは今一緒に働いている人に聞くのが最も信憑性が高いというわけだ。転職が当然のアメリカだからこその文化かもしれないが、日本にもその流れは来ている。
自分も知人のスタートアップ企業からよくリファレンスチェックの依頼をもらう。選考に進む前からオファーを出す直前まで、あらゆるタイミングで各社リファレンスを取っているようだ。
「この人に声をかけようと思うのだが、良い人か」と来る。これに自分が、NOと返せばそこまでなのだ。実際にSNSのフォロワーが数万いるちょっとした著名人なのだが、受けた業務委託契約をことごとく反故にする、正直信頼できるとは言えない知人がいる。その人のリファレンスチェックをもらったのでその旨を伝えたところ、結局契約に至らなかった。そういうことが身近に起きている。
逆にリファレンスチェックの評価が高い人は「この人は良い人である」という前評判を持って面接を受けられる。そうでない人との合格率の違いは説明するまでもないだろう。会う前に結果がほぼ決まっているといっても過言ではない。つまり、あなたの見えないところでキャリアの選択肢は増えたり減ったりしているのである。会えないことが前提になると、評判でキャリアが決まる傾向が加速するのは避けられない。
自分を知る人に評判を確認されるのがスタンダートになる。以前から言われていた「信頼社会」への突入が5年くらいは早まったのではないだろうか。つまり「周囲に信頼されている人」が勝つ、もしくはそういう人しか機会に恵まれない世界になる。評判が悪い人が生き残るのは相当難しくなるだろう。周囲の人は案外自分のことをよく見ているし、自分が知らないところで評価は広まっている。
だからその世界で面白いキャリアを手に入れる方法は「誠実に生きる」ことだ。約束を守る、うそをつかない、人を不当に傷つけない、誠実に生きることが一番の成功パターンになる。自分も未熟な人間なのでいろんな人に迷惑をかけてきた自信だけはあるが、そういう誠実な人が評価される世界がくるのはすごくいいことだと思うし非常に楽しみに思っている。