人によって6週間、4週間、12週間と期間に違いはあるものの、新型コロナウイルスのロックダウンや外出自粛による影響を感じていない人はいない。多くの国が規制を緩和し始めているが、子どもを持つ親は引き続き厳しい状況に置かれている。在宅勤務を続けながら、同時に家で子どもの勉強を見て、家の中を維持し、子どもと自分自身の心の健康を保つことを余儀なくされているのだ。
マサチューセッツ州ホリストン在住のパトリックはニューヨークのメディアに対し、「仕事がある日にいちばん大変なことは、自分の教師としての仕事量、妻のセラピストとしての仕事量、3人の子どもたちのニーズ、これらすべてのバランスをとることだ」と語っている。
コロナ以前、アメリカでリモートワークをしているのは、労働者全体のわずか7%にすぎなかった。リモートワークができるのは、主に管理職やホワイトカラーといった比較的収入の高い人に限られていた。
が、コロナによってこれが変わりつつある。現在、アメリカの労働者の半数以上がすべてでなくとも、自宅で行うことが可能な仕事・責務に就いている。10年以上にわたり、職場のトレンド研究を行ってきたグローバル・ワークプレイス・アナリティクスのケイト・リスター社長は、「家で仕事を余儀なくされる時間が長くなるほど、状況が落ち着いたときに、企業が在宅勤務を取り入れる傾向が強まる」と話す。
これが働き方における「ニューノーマル」になることに懸念を持つ人もいるだろう。ブルームバーグは4月23日、「パンデミックで普段の仕事時間が3時間増え、ワークライフバランスが失われた」と題した記事を掲載。「終わりの見えない、国を挙げての在宅勤務実験に突入して6週間、仕事と私生活の間にわずかでもあった境界線は完全になくなってしまった」と書いた。
非営利法人ディレクターで、2歳児の母であるルーシー・ウォルフは、「私たちは単に在宅勤務をしているのではなく、危機に直面しているから家にいて、その中で仕事をしようとしている」と話す。
ウォルフによる指摘は重要だ。なぜならこの期間を通常と同じように捉えてしまえば、「仕事と私生活の境界線が失われ、私たちの身体的、精神的、感情的健康が侵され始める」(ウォルフ)からだ。
在宅勤務になってから、週4日午前9時~午後4時だったウォルフの就業時間は大きく変わった。今では娘の昼寝の合間、さらに夕食後から午後10時、11時まで仕事をしている。夫も自宅勤務となり、午前8時~午後5時半まで家で仕事をしている。彼女のワークライフバランスに起こった最も大きな変化は、夫が1日24時間、週7日家にいることだ。
「これまでずっと娘の世話は私1人で担ってきて、彼が在宅になる前はそれで納得感がありましたが、今や彼が家で仕事をするようになって私たちは2人とも働いているのに、彼は家事を分担しようとしない……正直腹立たしくなってきた」
これは多くの人が感じる感情なのだと、ニューヨーク・タイムズ紙の子育て欄の編集主任、ジェシカ・グロースは言う。同氏のポッドキャストに出演したゲスト司会のリジー・オリアリーも「(責任が)母親のほうに多くかかっている。家事を平等に分けられていても、母親たちは家族の機嫌を保つという感情面の責任は母親側にかかっていると感じているのでは」と尋ねた。
これに対してグロースは、巻き込まれた父親も大変ではあるものの、母親の方が大変だと回答。「仕事をしながら同時に一日中子どもの世話をするのはやはり無理があるからだ」。