野村克也氏が野球選手を目指した「本当の理由」

① バラエティ・ベース・ポジショニング
「特別なサービス・製品のみに絞り込むこと」
② ニーズ・ベース・ポジショニング
「特定の客層ニーズをすべて満たす」
③ アクセス・ベース・ポジショニング
「物理的な環境に合わせて高い価値を生むサービス、製品を目指す」

重要なのは、特定のポジションの獲得で、より強固な参入障壁が手に入るかどうかです。上記の3つの戦略ポジションのうち、どれか1つで成功を収めたら、そのポジションをますます強化することで、ほかの企業がさらに参入しにくい状態を手に入れる。

組み立て式家具の世界的メーカーであるイケアは、「自分で組み立てる代わりに価格は極めて安い」という、特定の客層ニーズに集中しています。そうすることで、広い客層に売ろうとしているほかの家具メーカーでは実現が不可能な低価格で商品を販売でき、ますます参入障壁を強くすることに成功しているのです。

ポジショニングかリソースか、どちらが正解?

バーニーのリソース・ベースト・ビューと、ポーターの戦略ポジショニング。この2つを見比べると、素朴な疑問が湧いてきます。いったい、どちらの方法が本当の正解なのか? これは、1980年代に広く議論された話題でした。

アメリカの著名な戦略家、リチャード・P・ルメルトが1991年に発表した論文や、そのほかの実証研究から、現在では企業の持続的な競争優位への寄与度はポーターが約15%、バーニーが約45%、残りの40%は不確定要素とされています。

別の答えは、月並みではありますが、両方とも大切である、というものです。ビジネスの立ち位置も大切なら、独自の経営資源を生かすことも共に大切だとする結論です。

野村克也氏も、野球の世界を選ぶことで、やがてプロの世界に入り「野球というスポーツに適したリソースを持つ集団」の中で、新たな勝負をすることを強いられました。高校までは、生まれ持ったリソースで勝つことができたのに、「野球に適した運動能力を持つライバルたち」という、同種のリソースを持つ次の競争が始まったのです。

野村氏と同時代には、長嶋茂雄選手、王貞治選手など、スターの資質と実力を兼ね備えた人たちがいました。野村氏は、彼らと同じような存在(ポジション)を諦め、地味ながらも実力があり、冷静にデータから優位点を探り、そして勝利を手に入れる、というのちのデータ野球に通じる、独自の戦い方を身に付けて、スター街道を歩み続けた長嶋選手、王選手とは違う活躍の道(ポジション)をやがて見つけていったのです。

長期的な視点から見た「回答」を知っている、凄み

企業の長期的な繁栄に寄与する要素が、リソース45%、ポジション15%、残り40%は不確定要素。ならば戦略理論の長期スパンの結果を知る強みは何か。時間の経過で、次第にどんな差が生れていくのかを予見できることです。

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どんなに大きなチャンスが見えても、チャンスに適したリソースがなければイバラの道になる。チャンスが見えた者は、自分以外の(最適な)リソースとパートナーシップを作り、そのチャンスを獲得するコーディネーターとなるべきか。

一方、リソースがある者は、自己資源を最大限活用しながらも、相乗効果があるポジションを獲得することを狙い、さらに強固な勝者への道を歩むべきであることなど。

長期的な視点から戦略を理解することは、私たちに相乗的な強みを与えてくれるのです。歴史をより長くさかのぼることで、未知の危機や次の時代に対処する知恵を見つけられます。戦略とは歴史であり、歴史とは、より長いスパンでベストな解決策を模索できる能力なのですから。