会社は入ってみないとわからない。そのため、入ってから「雇用のミスマッチ」に気づくこともある。
大卒の新入社員の3割が入社3年以内に離職する。よほど「ブラック」な職場なのだろうと思われるかもしれないが、大学生の「就職したい企業ランキング」の上位に入る「ホワイト」に見える人気企業でさえそうだという。
なぜ若者は3年で辞めるのか? 就職するときの「物差し」が間違っているから、というのが私の考えだ。人材紹介業という仕事柄、就職や転職に関するさまざまな相談を受けるのだが、大学生の多くは、自分に向いているかどうかということではなく、その会社が有名だとか、給料がいいとか、親が喜ぶからとか、そういったことで会社を選びがちなのだ。
あるとき、さる優秀な学生にどの企業を受けるのかと聞いたら、「○○航空と○○電機と○○製薬を受ける」と言われて驚いたことがあった。また、知り合いから「娘が○○銀行と大手外資系コンピュータ会社に受かったが、どちらに行けばいいか」と相談されたこともある。業界も仕事内容もまったく違うではないか。サービス業に向いている人、メーカーに向いている人、みんなそれぞれ違うはずだ。
このように会社を知名度や給料で選んだ学生は、入社してすぐに「自分には向いていない」と気づく。これが「雇用のミスマッチ」である。その原因は「新卒一括採用」にあると私は考えている。
新卒一括採用とは、企業が高校、大学を卒業予定の学生、すなわち「新卒者」を対象に在学中に採用試験をおこなって内定を出し、卒業後すぐに勤務させるという日本独特の雇用スタイルである。だが、この採用システムは企業にとって非常に生産性が低い。
まず入社予定の1年以上前から企業説明会や面接、選考、内定、内定者フォローなどの採用活動をおこなわなくてはならない。当然、お金も時間も手間もかかる。内定を出したら出したで、大企業でも内定者の半数に辞退されることもあるという。
日本の一般的な高校や大学は職業教育を一切おこなわないので、入社したら今度は新卒者に研修を受けさせなくてはならない。さらに研修を終えたとしても、配属された部署では新人は2~3年のあいだは使い物にならないというのが現場の一致した見解だ。つまり、お金や時間や手間をかけて、即戦力という意味ではほとんど役に立たない人材を採用するという皮肉な結果になっている。
企業側もこの新卒一括採用の弊害を感じており、経団連は大手企業の採用面接の解禁日などを定めた指針を2021年春入社の学生から廃止すると発表している。これは解禁日ルールの廃止であって、新卒一括採用自体の廃止ではないが、これをきっかけに制度そのものを見直す動きが一気に広がるのではないかと私は見ている。
ちなみに、人材が流出していく分、補填しなくてはならないと考えた企業が目をつけたのが第二新卒、つまり一度新卒で就職したものの1~3年のうちに離職する人たちだ。
第二新卒なら最初に入った会社で社会人としての訓練も心構えもできている。卒業して3年以上経っている場合でも、20代ならば伸びしろがある。また、30代ならば実績と伸びしろの両方が期待できる。そのため転職市場では、こうした若者を採用しようという動きが活発になっているというわけだ。