目標を達成する人が密かに使う「リストの魔法」

これは考えてみれば当然です。「情報収集能力を高めるために中国語を学ぶ」といった目標を立てたとして、それはやることリストの中に追加するタスクにはなりません。具体的な「アクション」ではありませんし、どのようにしたら「完了」となるのかがあいまいだからです。

それでもこうしたあいまいな目標から、具体的なアクションを生み出さなければ、いつまでたっても忙しくタスクを処理するだけで時間が過ぎてしまいます。

遠大な目標や、より長期にわたって継続している仕事に対して、どのようにタスクを割り振ればいいのでしょうか? こうした「あいまいな目標」は、航海でいうならば方向性を定めるために利用する「北極星」のように扱い、その方向性に関係した「アクション」を考えていくことが重要になります。

そのような作業のことを、よく「目標からタスクを『振り出す』」などと表現します。これは、昔話に出てくる打ち出の小づちのように、「目標を振ればタスクが出てくる」ようなイメージから生まれた表現です。

例えば先程挙げた「中国語を学習する」という例をみてみましょう。学習をするからには、当然スタート地点が必要です。まずは学習用のアプリで発音を学びますか? それとも教科書を購入して独学を始めますか? あるいは先生を探し、時間をかけて会話を学ぶのでしょうか?

これらは具体的にアクションを起こせるタスクです。「中国語を学ぶ」という目標と向き合った結果、そこからタスクが振り出されてきたのです。

「1年・四半期」ごとのロードマップを描け

拙著『ライフハック大全』で、私はブロガーのクリス・ギレボーが実践している「1年間のレビュー」の仕方について紹介したことがあります。

彼は1年の抱負の具体的なロードマップを作るために、1年の目標を立てた後でそれを四半期ごとの小さな目標に分解し、さらにそれを四半期の中で実行すべきより小さな目標へと分解するという作業を行っていました。いわば、1年の抱負を4つに分割して、「3カ月の目標」に分解していたのです。

これを、箇条書きのリストを使って実践してみましょう。まず、年間の目標に対して四半期の目標を立て書いていきます。

● 1年の抱負
  - 第1四半期の目標
  - 第2四半期の目標
  - 第3四半期の目標
  - 第4四半期の目標

それぞれの四半期の目標には、具体的な達成したい小目標が4~5つ程度ぶら下がります。

大事なのはこれら(四半期の目標)は、普段のやることリストのタスクのような、「必ず達成すべきもの」ではなく、「より具体的なタスクを振り出すための方向性」であるということです。

1年の抱負が本を執筆することならば、第1四半期の目標はテーマ選び、第2四半期の目標は資料収集になるかもしれません。すると、第1四半期には「テーマの案を練る」「過去の類書を探す」といった小目標が入ってくるはずです。

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ここまで分解ができたなら、週次レビュー(週に1度、すべてのタスクを見直し、リストを一新する作業)のたびに「テーマの案を練る」という目標から具体的な行動を振り出します。そして、やることリストのほうに「非緊急・重要タスク」として加えていきます。

このとき緊急なタスクと区別するために、文字の色を変えて注意を促したり、まったく別のリストを用意したりしてもいいでしょう。

長期の目標とタスクとは、画家とキャンバスの関係に似ています。画家が一歩身を引いて全体の構図を見定めているのが長期的な目標を検討している部分だとするなら、キャンバスに近づいて細部に一筆を加えてゆくのは日々の具体的なタスクに相当するのです。

タスクを振り出すという考え方を身に付けて初めて、タスク管理は日々の仕事も人生の方向性も、両方とも管理する道具として使えるようになります。