街中に続々登場「シェアサイクル」の大きな課題

台湾北西部ではYouBikeが年々エリアを広げる。自転車はジャイアント製で乗り心地もよい(筆者撮影)

近頃、平日昼に東京・大手町や有楽町のビジネス街を歩いているとビジネスマンが赤い自転車に乗って颯爽と駆け抜けていく様を見ることが増えた。乗っている自転車は自分のものでも、会社のものでもない。シェアサイクルだ。

シェアサイクルはここ数年、国内で大きく数を増やし、認知度も上がってきた。一方で日本に上陸して一時話題になった中国発のシェアサイクルは撤退し、日本でもメルカリがシェアサイクル事業を他社に譲渡するなどビジネスとして難しい面が浮かび上がってきている。そこで本記事では国内外(とくに中国・台湾)におけるシェアサイクルの現状を見ながら、今後のシェアサイクルの姿を探っていきたい。

「ドコモ・バイクシェア」の現状

まず日本国内のシェアサイクルの現状を見てみたい。冒頭で紹介した赤いシェアサイクルはドコモ・バイクシェアが運営するシェアサイクル「ドコモ・バイクシェア」だ。全国17エリアに1030カ所のポートを設け、約1万台を運用している(2019年3月現在)。

(上)金沢市が実施し、地元建設コンサルタントが運営するシェアサイクル「まちのり」(筆者撮影)/(下)Pippa!のように運輸事業者と協力してシェアサイクルを展開するケースもある。写真は京阪電鉄と協力し、京都市の三条駅のすぐ横に整備されたPippa!のポートだ(筆者撮影)

ドコモ・バイクシェアは直営エリアのほかにシステムも10以上のエリアに提供している。

通信事業者系でいえば、ソフトバンク系の「ハローサイクリング」も規模が大きい。ほかにも鉄道会社やバス会社といった運輸事業者と協力しながらポート整備を進めたPiPPA(オーシャンブルースマート)をはじめ民間企業がいくつも業界に参入している。

こうした民間企業のシェアサイクルの特徴はほかのエリアで同じブランドのシェアサイクルを使う際でもユーザーIDや決済方法を逐一登録しなくて済むことだ。

また、地方においては地方自治体が地元事業者を運営事業者としてシェアサイクルを進めるケースも多い。例えば金沢市の「まちのり」や岡山市の「ももちゃり」が代表例だ。

利用促進に向けた取り組みも行われている。2019年3月には国土交通省の実証実験としてシェアサイクルのポートへ誘導するためのデジタルサイネージ設置の実験が赤坂見附駅近くの地下歩道で行われた。近隣のポート位置と共に残り台数もリアルタイムで更新し、表示するデジタルサイネージの設置は世界的にもほぼ例のない取り組みだ。

今年3月に赤坂見附駅近くの地下歩道で行われた社会実験の様子。デジタルサイネージを用いてポートの場所や残り台数を案内している(筆者撮影)

またNAVITIMEやヴァル研究所といった経路検索サービスを提供する会社がシェアサイクルに対応したサービスをリリースし、シェアサイクル利用をサポートするなどシェアサイクルをめぐるビジネスは活況だ。こうして国内でシェアサイクルが広がる中で、中国で成長した企業が日本市場に進出しようとしたことがあった。

中国企業が参入しようとしたものの…

中国は今、シェアサイクル大国だ。2014年から2016年にofo、Mobike、Bluegogo、Hello Bike(現・Hello TransTech)などが次々と創業し、一気に成長した。これらのシェアサイクルの特徴はスマートフォンのアプリで手軽に予約できること、乗り捨てができること、多くの自転車が至る所に配置されていること、低廉な料金であることなどが挙げられる。また、私有の自転車が盗まれやすいといった中国の国内事情も後押ししたようだ。