11月25日付ウォールストリート・ジャーナル紙は、印中国境を訪れた同紙コラムニストでバード大学教授のミードによる「印中国境の山岳地帯から見た米印関係の今後」との論説を掲げ、印中国境問題を見れば、トランプ政権下での米印関係の行方はそれほど悪くなく、インド人の多くはトランプを歓迎している、と論じている。要旨は以下の通り。
我々が訪問を許された、ブータンと中国に挟まれた印領の中心都市タワングは、北東インドの端アルンナチャルプレデシュ州のその端だが、ここからは米印関係の将来性と複雑さが分かる。
ダライ・ラマは1959年にタワングに亡命し同じ道を62年に中国軍が侵攻し肥沃なアッサム高原まで到達した。当時のネルー首相はショックを受け、米国に軍事支援を要請。数週間の占領の後中国軍はチベットに帰ったが、この攻撃は今でも北東部州と首都の省庁の思考に影響している。
タワングから印中間の係争地帯ブムラまではジープで2時間の距離で、その途上我々は62年以前の構築物と少し近代的な施設の両方を見た。これはインド陸軍が今後の中国の敵対行動に対応する用意があることを意味する。
ブムラ到着後1万5200フィートの国境周辺施設に案内され、遠方にインド側の倍の規模と言われる中国軍が駐留する様子を見た。現在、国境は閉鎖されている。
中国は国境の向こう側の新施設に莫大な投資をしている。インドも最大限努力しているが、インド側の地形は困難でブムラの狭曲道路の維持は一苦労だ。
州の人口は140万人だが数十の部族に分かれ一部はモンパより小さい。マニプールやナガランド等の他の北東部の州も同様に複雑だ。
ミャンマー内戦で難民と武器と薬物が流通する中、民族や宗教を巡る緊張が激化し中国の脅威が無くともインドは手一杯で、この脅威がインドを米国に近づけた。
この国では宗教を含む全てが複雑だ。30年前にはこの州の人口の10%はキリスト教徒だと言われた。現在はキリスト教徒が一番多く公式には30%だが実際はそれ以上だろう。中央アジアのイスラム改宗者と英国のキリスト教徒に続けて征服されたインドは改宗を止めたいが、米国の信教の自由と衝突する。
そしてバングラデシュだ。インド北東部は同国空域へのアクセス無しには防衛不能だ。ハシナ前首相はインドと緊密に協働してきた。
反対運動が権威主義的ハシナの退陣に至った際に米国人は喝采した。多くのインド人は結局ハシナと同程度に権威主義的だが親インドの度合いが低い政府が生まれると見ており米国の関与を批判している。
タワングから見ると、強力な米印関係は必要だが問題も多い。米国のみが中国の対印侵攻を止められる。しかし、米国も難しい友人だ。
ニューデリーとタワングでは、インド人は概ねトランプ当選を歓迎している。彼らはトランプが人権を過度に問題にせずインドが必要な対中対抗支援を供与することを期待している。
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印中国境周辺は、自然環境、政治的環境共に、相当厳しいはずだ。インド陸軍は印中国境で訓練をしているため、世界最強の高地戦能力を持っており、他国の陸軍との共同演習に際してこの特殊技能を提供している由だ。
陸上自衛隊は、双方の空軍の参加も得て2018年から毎年インド陸軍と対テロ戦技能向上等を目的にダルマ・ガーディアンと呼ぶ共同訓練を行っているが、その中で高地戦も訓練対象になったことがある。これらの努力は、万一台湾有事となった場合の陽動作戦として、インド陸軍が印中国境で何らかの行動を起こす可能性と、そのための能力強化を日本他の諸国が支援していることを見せることを通じて、中国側にそれが排除されないと思わせる上で大変に重要だ。