プロ野球日米通算197勝をマークする楽天の田中将大投手が今季限りでチームを退団し、新たな移籍先を探すことになったことは、今オフの球界の関心事の一つだろう。高校卒業後にドラフト1位で入団し、「チームの顔」として2013年にはレギュラーシーズン24連勝で日本一にも貢献。メジャーで7シーズンを過ごした後の21年から再び復帰した楽天にとって、田中投手はチーム最大の功労者でもある。
これまで、将来は球団の幹部候補、監督候補との記事が散見された。しかし、右腕がこだわったのは「未来の手形」ではなく、投手として必要とされる「現在のマウンド」ということか。「(今のチームに)もう居場所はないんじゃないか」と寂しい決別宣言となった。
「楽天イーグルスと来季の契約を結ばずに新たなチームを探すことに決めました」
田中投手が退団の意向を示したのは11月24日、自身のYouTubeチャンネルだった。発表が日本代表「侍ジャパン」が国際大会「ラグザス presents 第3回WBSCプレミア12」の決勝を戦う日と重なったことに、批判が集まった。それでも、注目度は高く、田中投手の楽天退団を1面で扱ったスポーツ紙もあった。
マー君の愛称で親しまれてきた右腕も36歳。年齢的にはベテランの域に達する。
8学年上の「松坂世代」は、日本のプロ野球12球団で最後まで現役を続けていたソフトバンクの和田毅投手が今季限りでの引退を表明。一時代を築いた世代は今後、指導者や解説者などとして野球界を支えていく世代へと本格的にシフトしていく。
田中投手ら球界に数多くの一流選手を輩出してきた1988~89年生まれの「88世代」も過渡期を迎えている。元日本ハムの斎藤佑樹氏が早稲田実業高時代に甲子園を沸かせた「ハンカチ世代」としても広く知られており、各選手の今後の去就は注目に値するだろう。
巨人の坂本勇人選手はプロ2年目から遊撃手のレギュラーを獲得し、現役最多2415安打をマークする。三塁手へ本格転向した今季は、新たなポジションでゴールデングラブ賞に輝いたが、109試合出場で打率2割3分8厘、7本塁打、34打点という成績にとどまり、来季は1億円の減俸を受け入れた。
広島からメジャーへ移籍した前田健太投手(デトロイト・タイガース)は今季途中、中継ぎへの配置転換を言い渡された。DeNAの宮?敏郎選手や広島の秋山翔吾選手は健在だが、ソフトバンクの柳田悠岐選手は負傷もあって57試合の出場にとどまった。中日の大野雄大投手も左肘手術からの復活を目指し、今季は2勝(6敗)止まりで来季は正念場を迎える。
「88世代」を牽引してきた田中投手は日米通算200勝の節目まで残り3勝に迫るが、今季は開幕前に行った右肘のクリーニング手術の影響で1軍戦登板は9月28日のオリックス戦1試合のみに終わった。このときは5回4失点で負け投手になり、プロ入り後初めて勝ち星がないシーズンとなった。とはいえ、チームは来季の戦力と見据え、登板機会を設けて契約交渉も行った。
ただ、田中投手にとっては不本意な提示だったようだ。年俸提示は減額制限(1億円以上は40%)を超え、田中投手によれば、球団との話し合いは1回の15分で終わったという。金銭的な条件が不満ではないと否定した上で、「期待をかけてもらって、やりがいを感じるところでやりたい」と、自ら自由契約を望み、球団も来季の保留者名簿に載せないことが決まった。