ビーティはトランプ第一期政権につき、EUはナバロとクドローの競争関係を利用し、より自由貿易主義のクドローを相手にすることにより米国の自動車関税引き上げを回避したと述べている。側近の間の競争関係は、程度の差はあれ何時の政権でも同じだが、ビーティが述べるような成功話は興味深い。
トランプ政権との交渉には狡猾な外交が必要だ。なお、貿易強硬派のナバロは、今年3月に議会の召喚拒否の罪で4カ月収監され7月中旬に釈放された。釈放の日にはミルウォーキーでの共和党大会に駆けつけ、分断的な演説をした。
第二期トランプ政権につきまず注視すべきは、政権の人事である。既に、イーロン・マスクを閣僚にするとトランプは述べている。事務レベルも随時決めるだろう。
しかし、トランプの任命第一基準は能力、識見というよりも忠誠心となる。新政権発足後に最初にすることは嘗て自分に手向かった者達のリベンジだと公言している。トランプは今回の勝利により一層自信を強めている。
もう一つの問題は、トランプの貿易経済を含む政策の基本は変わらないということだろう。ビーティも示唆するように、トランプは真剣な政策の論理には関心も理解もなく、要するにその政策は側近達の人間関係の中で決まるであろう。
政策の間の整合性や目的達成方法の妥当性、多くのトレードオフの調整等はほとんど考慮されない。向こう4年は不確実性が高まる時期になることを覚悟すべきだろう。予測不能な貿易経済政策は、国内で、また関係国の間で大きな摩擦を起こすだろう。
日本等は、米国との協力が必要であり、それは利益でもある。日本も欧州等と共に一定の役割を果たしていくべきだろう。