先の米大統領選で物議をかもしていた共和党右翼グループの文書「Project 25」に代わり、トランプ氏自身がこれまでに開陳してきた次期米政権の政策指針「Agenda 47」が改めて米マスコミの関心を集めている。
「Project 2025」報告書(920頁)は、ワシントンの保守系シンクタンク「ヘリテージ財団」が「次期政権の青写真」と銘打ち、昨年4月に刊行、次期共和党政権を担う側近、関係者を中心にコピーが回覧されてきた。
報告書の執筆、編集には、トランプ前政権当時の上級官僚、スタッフたち多数が参加。外交、内政全般にわたり、政権発足と同時に打ち出すべき具体的内容が盛り込まれた。
しかし、大統領選最中の今年7月、報告書の意義について、総指揮をとった同財団のケビン・ロバーツ理事長が、武力も辞さない“第二次米国革命”を示唆するかのような過激な発言をしたことをきっかけに、ハリス陣営のかっこうの攻撃材料となり、同理事長と親交のあるトランプ氏自身もマスコミの批判にさらされ続けた。
このため、トランプ氏は「報告書のことは何も知らない」「内容も自分の見解と異なる」などとして距離を置いてきた。
それ以来、トランプ氏勝利確定後の最近に至るまで、「Project2025」の存在そのものも、話題に上らなくなった。ワシントン政界では、「すでに反故にされた」との見方が広がっている。
代わって改めて注目され始めたのが、「AGENDA 47」に他ならない。
「AGENDA 47」の最大の特徴は、シンクタンク、全国共和党委員会などの外部組織ではなく、トランプ氏自身が「次期トランプ政権」の基本的政策について、自らの言葉で「公約」として見解を示した点にある。
それだけに、来年1月20日、大統領正式就任後、公約達成に向けて直ちに新政権が具体的に始動することになる。
「AGENDA 47」は一昨年12月から昨年9月にかけて、トランプ氏によるビデオ・メッセージの形でウェブサイトに五月雨式に掲載された。しかし、米メディアは当時、トランプ氏の“虚言癖”に対する教訓から、とくに大きな関心を示しておらず、従って、ビデオでの「公約」についても、散発的に報じただけだった。
そこで、トランプ次期政権発足が決まった今、世界でとくに注視の対象となると思われる内政、外交に関するハイライトを以下に紹介する。そのすべてについて「私は・・」の1人称のかたちで論じられている。
〈経済政策〉
「ジョー・バイデンは経済にとって、“災害(disaster)”となってきた。大規模な税引き上げ、反エネルギー・キャンペーン、何兆ドルもの無駄な支出によって、バイデンはここ半世紀の中で最も高いインフレを引き起こした。金利は破滅的に上がり、銀行倒産も増え、経済大恐慌の淵にある。
私はかねてから言ってきたことだが、倒産企業救済はやるべきではない。しかし、現下の経済は早急に立て直す必要がある。
私がホワイトハウスに戻った場合、ただちに、エネルギ―生産を加速させ、規制を撤廃し、インフレを鎮めるために、これまでの(高い)バイデン税率を廃止する。金利を正しいレベルに戻すために速やかに実行に移す」
〈対中国政策〉
「民主党およびワシントンの名ばかりの一部共和党員たちはこれまで、ナンセンスな『グリーン・ニュー・ディール』、馬鹿げた外国の戦争、および世界中からの不法外国人居住者のために何兆ドルも出費する一方、中国は米国経済の宝石ともいうべき部門乗っ取りのために何兆ドルも資金を投じてきた。今日もやり続けている。