「受け入れ姿勢」を規定する第一の要因は、経済状況である。カナダが移民受け入れに積極的だった背景には、広い国土と少ない人口で、経済発展のため労働力を外から調達する必要性があった。上記記事では、カナダでは、近年の経済減速の中、移民制限論が出ていることが指摘されている。経済が減速すれば、労働力の必要性が減り、また、国民の不満が移民へと向かいやすくなる。
「受け入れ姿勢」を規定する第二の要因は、多文化への許容度であろう。カナダや豪州は、多文化を許容する社会意識を醸成してきた。カナダも豪州も、元は、先住民が住んでいた所に、白人が来て作った国である。白人が後発の移民による「文化移植」にオープンな姿勢をとることは、近年に至り、先住民の文化を尊重しようとする姿勢となったこととも親和的なものであろう。
「受け入れ姿勢」を規定する第三の要因は、変化がどれだけ急激かであろう。上記記事でも、カナダにおいて、近年の一時的滞在者の急増が移民受け入れの方針転換の背景にあったこと、移民人口が集中する地域で緊張が見られることに触れている。移民に対して寛容な国でも、急激な変化が生ずれば「破断界」が訪れてしまう。
こうした事柄は、日本にも多くの示唆を与えてくれる。日本にとって外国人受け入れの経済的ニーズは大きい。一方、日本は、現在、「好況が人手不足を生む」という状況ではなく、人々の不満が表面化しやすい点を念頭に置く必要があろう。
日本においては、外国人受け入れの経済的ニーズは大きいものの、「多文化への許容度」は高いものではない。外国人受け入れを進めていくとすれば、多文化を許容する社会意識の醸成が必要だろう。
急激な変化を避けることも重要である。ここで難しいのは、移民人口が集中する地域の問題である。
移民は血縁、地縁等で集まる傾向がある。埼玉県の川口市、蕨市のように、地域住民との緊張が生じやすい。国全体として、外国人受け入れを円滑に進めるには、そうした移民人口の集住地域の問題にきちんと対応していく必要がある。