【過小評価できない北朝鮮の動き】ロシアへの北朝鮮軍の派兵は「世界大戦への第一歩」

2024.11.12 Wedge ONLINE

 10月29日、韓国情報当局は北朝鮮軍のうち一部兵力が戦線に移動した可能性があるとし、また10月28日にフォン・デアライエン欧州委員長と電話会談を終えた尹大統領は、「北朝鮮部隊の戦線投入が予想より早く進んでいる」と述べている。現状は、緊張を高め西側に脅しをかけるプーチンの戦略に北朝鮮が本格的に参加しつつあることを示している。

 プーチンは6月、北朝鮮と「包括的戦略パートナーシップ条約」を結んだ。露朝条約は第16条で、任意の第三国が「一方的な強制措置」を適用する場合、露朝双方はその「直接・間接の影響」を「除去しあるいは最小にするための実践的な努力を傾ける」と規定している。

 これらに対し、現時点で欧米の対応は必ずしも明らかではない。明らかなのは、ATACMS長距離兵器の使用制限撤廃の問題について、米国防総省のシン副報道官が「長距離攻撃やATACMSの使用に関する方針に変化はない」と述べていることだ(10月24日)。

 この状況の中で今もっとも活発な動きを見せているのが韓国である。韓国にとっては?北朝鮮軍の練度や武器性能の向上、?露朝協力の進展に伴う高度軍事技術の移転が直接的脅威であるか、加えて、?北朝鮮軍の能力や戦闘方法について直接情報を得る絶好の機会、という観点もある。

 すでに韓国の軍・諜報部門の代表が北大西洋条約機構(NATO)、EUを訪問して情報共有ならびに協議を行っており、北朝鮮軍にかかる情報提供や、北朝鮮兵員に対する説得、捕虜の尋問、脱北希望者の収容の申し出等、非戦闘分野における協力は行われている。

 また10月30日、韓国大統領府高官の発言として、韓国は北朝鮮軍の動向を把握し分析するチームをウクライナに派遣する必要性に言及したとされており、ウクライナに軍・諜報関係者が相当期間駐留する可能性が出てきている。

今、ウクライナの支援を強化できるか

 今後の焦点は、韓国が基本方針としている「段階的措置」が露朝関係の如何なる動向に対してどのような措置をとっていくかである。韓国が何らかの形でウクライナに対し155mm砲弾などの装備を直接供与する方向に向かうか否か、またその際の北朝鮮側の反応がどのようなものかは欧州とアジア双方に影響を与える問題となる。

 依然として戦況に最も実質的な影響を与えうるのが米国による軍事支援である事実は変わらない。その米国は、今も状況悪化を恐れて長距離兵器の使用制限解除に踏み込まない。

 本件記事にあるように、ロシアの勝利を許してしまった後で欧州とアジアの安全保障情勢の変化に如何に対処すべきかを考えるのか、それとも今ウクライナに対する支援を大幅に強化して、リスクを冒しても枢軸国と対峙するかの選択が問われている。