総選挙の結果、自民・公明の与党は「過半数割れ」となり、今後は、政策実現のためには、「連立」または「政策の部分連合」が必要になる。そして、当面のカギを握っているのが、議席4倍増の28人へと大躍進を遂げた国民民主党であることは衆目の一致するところだろう。
選挙後の会見等で、国民民主党の玉木雄一郎代表は、連立は否定しつつも、「良い政策は協力する」として、『部分連合』の否定はしなかった。したがって、国民民主党の目玉ともいえる公約部分を「自公+国」の政策として調整・共通化していく協議が始まる。
「国民の手取りを増やす」と主張してきた国民民主からすれば、象徴的なのは、所得税の課税基準の引き上げ、いわゆる「103万円問題」であり、おそらくここは自公も飲み込めるところであろうが、コメ政策、農業政策についても、国民民主にはかなりのこだわりがあり、103万円問題と同様の動きが出て来るだろう。
まず、三党の選挙公約がどうだったかを検証し、一本の政策に合意・集約できるかどうかを展望してみたい。
自民党
「需要に応じた生産・販売が行われるよう、水田活用の予算は恒久的に確保する」と従来の国内需給均衡・価格維持路線である。やや付言すれば、<コメの過剰生産を抑えて、米価を維持する「減反」の続行>である。
2018年以降、行政による生産数量目標の配分はしないが、国がコメの需給計画(数字)を示し、他の作物が価格・所得で有利になるように助成し、結果的にコメを作らせない「形を変えた減反」が続いている。消費者は、高い米価での購入と助成のための税負担という二重の負担を強いられている。
総選挙における自民党の公約は以上のとおりであるが、総裁選あるいはそれ以前の石破茂首相の農政プランを見ると、石破氏は、総裁選挙の期間中に「他の国が農地を守り増やしているのに、日本だけが減らしてよいものなのだろうか」「コメの減反(生産調整)をいつまで続けるのか」「コメをもっと作り、輸出拡大を進め世界中に売ろう」「コメをたくさん作れば値段は下がるが、そこは所得補償で」と主張してきた。これと矛盾しないような自民党の公約づくりは、抽象的表現にならざるを得なかったと見ることもできる。
このような背景からか、間に挟まった小里泰弘農林水産相は、就任時の会見で「水田の活用」を問われ、「主食用米に代わり飼料用米を中心に水田のフル活用を進めていきたい」とか、「農業者の所得向上が我々の最大のテーマだ。農業者への直接支払いを中心に進めていきたい」とやや複雑な答弁であった。
なお、自民党の公約には、「水田政策を見直す」というくだりもあるが、具体的な中身はないと評価されている。(読売新聞)
公明党
「水田活用の直接支払い交付金等について、予算を恒久的に確保する」として、自民党と大差はない。
国民民主党
「環境加算、防災・減災加算を含む<食料安全保障基礎支払い>(直接支払い)を導入する」とある。米や麦、大豆なら作付面積、家畜なら頭数に応じて交付金を支払い、農家が農業を続けられる「基礎所得」を保証する。米は10アール2万円程度を想定している。
水田活用直接支払交付金の「5年に一度の水張り」要件については、離農と耕作放棄地が増える原因となることから「地域事情に応じて柔軟に緩和」としている。
この公約は、筆者が想像するところ、「生産の継続に必要な岩盤としての直接支払い」による所得の保証だから、<価格は競争で、所得は経営政策で>という石破農政プランにも共通するものと考える。