【DeNAの下剋上を成し遂げた3つのキーワード】シーズン勝率5割から勝ち上がった短期決戦の怖さ

2024.11.05 Wedge ONLINE

 プロ野球の年間王者を決める「SMBC 日本シリーズ2024」は、セ・リーグのDeNAベイスターズが、パ・リーグ覇者のソフトバンクホークスを4勝2敗で下し、26年ぶり3度目の日本一に輝いた。レギュラーシーズンはリーグ3位で貯金わずか2だったDeNAが、貯金42と圧倒的な強さでパを制したソフトバンクに勝利する下剋上。短期決戦の怖さをまざまざと見せつけた勝負の分かれ目は、「シリーズ男」「指名打者(DH)」「継投策」にあった。

レギュラーシーズン3位から下剋上を果たし胴上げされる三浦大輔監督(産経新聞社)

史上最低勝率の「日本一」

 「最高にうれしいです」

 歓喜の横浜スタジアムで、DeNA・三浦大輔監督が夜空に5度、宙を舞った。

 名将・三原脩監督が率いた1960年、マシンガン打線が売りだった98年に次ぐ3度目の日本一。生え抜き監督の指揮官は、98年の現役時代と合わせ、選手、監督としてチームの日本一を経験した。

 レギュラーシーズンは71勝69敗3分。勝率・507で優勝した巨人にゲーム差8をつけられての3位だった。クライマックスシリーズ(CS)第1ステージで同2位の阪神に2連勝を飾ると、巨人が1勝のアドバンテージを持つ最終ステージは3連勝の後に2連敗し、最終戦にもつれる大熱戦。最後の第6戦も1点差で接戦を制した。

 今季の日本シリーズは、第5戦までDeNA、ソフトバンクともに本拠地で勝てない異例の“外弁慶シリーズ”となった。DeNAは本拠地で2連敗した後、敵地で3連勝。日本一に王手をかけて舞い戻った横浜で、大量11得点を奪って11―2で圧倒した。ようやく手にした本拠地での白星で日本一を決めた。

 スポーツニッポンによると、歴代日本一の球団の中では、75年の阪急のシーズン勝率・520を下回る最低勝率からの頂点だった。07年のCS導入以降、リーグ優勝チーム以外の日本一は以下の表の通り、5度目となった。

躍動の導火線となった選手

 リーグ3位のDeNAと、圧倒的な強さでパを制したソフトバンクの勝負の分かれ目を試合結果から検証する。

 まずは、「シリーズ男」の存在だ。

 ポストシーズンの短期決戦で飛躍する選手の有無は、「水物(みずもの)」といわれる打線において大きな影響を与える。

 今回はシリーズMVPにも選ばれたDeNAの桑原将志選手が、大きな存在感を示した。

 桑原選手は全6試合で1番を託され、27打数12安打で打率4割4分4厘、1本塁打、9打点の大活躍。第2戦からは日本シリーズ新記録となる5試合連続打点をマークし、第6戦は1点リードの2回2死二、三塁から2点適時打を放って、チームに勢いをもたらせた。チャンスメークに、ポイントゲッターにと打線に勢いをもたらしただけでなく、第3、5戦は守備でもダイビングキャッチの好捕で盛り上げた。

 7年前に初出場した日本シリーズでは同じ1番を担いながら、6試合で26打数4安打10三振と苦しんだ。今回は、同じソフトバンク相手のリベンジ。

 米大リーグでも、ポストシーズンの10月に勝負強い打者は「ミスター・オクトーバー」と呼ばれ、今季もワールドシリーズ(WS)を制したドジャースで、大谷翔平選手の同僚であるフレディ・フリーマン選手がWS5試合で打率3割、4本塁打、WSタイ記録の12打点をマークしてシリーズMVPを獲得した。日本シリーズも、桑原選手の活躍が、DeNA躍動の導火線となった。

打線に厚みを出したDH制

 パの本拠地で導入される指名打者(DH)も、DeNAが味方につけた。

 2連敗で迎えた第3戦からの敵地3連戦は、第1戦で左足を負傷したリーグ首位打者のタイラー・オースティン選手をDHで起用した。3、4戦は一塁に佐野恵太選手、左翼に筒香嘉智選手を置いたことで、打線に厚みが出た。