そうしたイスラエルの最新技術を取り込もうと韓国や中国は早々と直行便を飛ばし、密接な協力関係を築いてきた。しかしデュアルユースにアレルギーを抱く日本の政府や企業はイスラエルと距離を置き、現地進出に二の足を踏んできた。
もちろん現在のイスラエルの軍事行動は憂慮すべき事態であることは確かだ。ただ日本はUAEについても「中東」としてひとくくりにし、進出に慎重な面が否めない。UAEに拠点を置く日本企業は約360社に増えたものの「中国はこの間に5000~7000社が進出している」と磯俣秋男駐UAE特命全権大使は日本の出遅れ感を指摘する。
日本大使館の乾有貴参事官も「韓国、中国、インドの企業進出が際立っている」と語り、「急激なスピードで成長するUAEに日本も追いついていくべきだ」と主張する。現地の日本貿易振興機構(JETRO)ドバイ事務所でも「製造業を持たないUAEと日本はよい補完関係を築ける」と強調する。
UAEの人口約1000万人のうちUAE人はわずか1割の約100万人。9割はインド、エジプト、パキスタンなど近隣諸国からの出稼ぎ組で、国全体の平均年齢は実に28.7歳。日本の平均年齢48.4歳に比べ20歳も若く、そうした人たちがUAEの経済発展を支えている。
UAEにある世界一高いビル、ブルジュ・ハリファの建設は韓国のサムスン物産が担ったが、光通信やITS、ゲーム・アニメのようなコンテンツ分野では日本に一日の長がある。そうした日本の強みを世界に広めるには、UAEのような最先端技術のテストベッドを上手に生かす、ある意味での狡猾さが日本の政府や企業に必要である。
現地進出を目的化すべきではないが、デジタルが促すモビリティー革命の大競争時代を迎えた今、日本の出遅れは避けなければならない。家電分野で韓国や中国企業の先行を許してしまった歴史を繰り返すべきではないだろう。日本の国家戦略、企業戦略の再構築が急務である。