2024年9月16日付ウォールストリート・ジャーナル紙は「第三次世界大戦到来に竦む(すくむ)米国」とのウォルター・ラッセル・ミードの論説を掲載し、国家防衛戦略委員会報告書の内容と米国内の無関心を憂い、世界的に大規模戦争の危険が増しているのに米国は十分な準備を怠っていると強く警告している。
ワシントン・ポスト紙のイグネイシャスは、ウクライナは出血多量になっていると報告した。ニューヨーク・タイムズ紙は、中国が不法に自国領と主張する島や環礁からフィリピン軍を追い出す活動が過激化していると報じ、ブルームバーグは、米政府高官がイランの核兵器取得へのロシアの支援を懸念していると報じる。中国、ロシアおよびイランは、米国と同盟国を犠牲にして勢力を伸ばしている。
米国の失敗の全体像を理解するには、国家防衛戦略委員会が最近発表した報告を読むべきだ。上下両院軍事委員会幹部が指名した9人の専門家からなる委員会は、国家的中心課題として議論されるべき全会一致の報告書を発表した。
超党派の報告書は政治的失敗、米国の弱体化に関する壊滅的状況に詳しく触れている。米国は、近未来の大戦争発生の真の危険を含む、1945年以降最も深刻な危機に直面している。
米国が最後にこのような戦争に備えていたのは冷戦時代だが、今はその準備ができていないどころか状況はより悪い。中露は無制限の協力関係にあり、これはイランと北朝鮮との軍事経済協力を含み深化している。
反米の新連合は一地域の紛争が世界戦争となる真のリスクを作り出している。第三次世界大戦が近い将来発生する可能性は高く、米国は発生を防止し勝利するには弱すぎる。
報告の内容以上に怖いのは無関心だ。この委員会報告はほとんど無視された。メディアは声を上げず大統領候補も演説で取り上げずSNSでの嵐も起こらず米国の政治層は平和の脆弱化に全く関心を示さなかった。
この報告は状況が限界に近付いていると警告している。歴史はこれだけ深い耽美主義が長期間続けば莫大なコストを伴うことを示している。我々の敵が、軟弱な米国政治層が米国の覇権を不名誉な最後に導こうとしていると確信していることが、元々相互不信を持つ中露イラン北朝鮮が、このタイミングで米国に共同で反旗を翻したことの理由だ。
予言者エゼキエルは歩哨の仕事は敵が来たらトランペットを吹くことだと言った。国家防衛戦略委員会はその使命を果たしたが、より多くの煩いトランペットが必要だ。
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ミードには珍しく熱のこもった論説だ。彼の悲憤慷慨は米国が同時多発的な地域紛争または世界的規模の紛争(≒第三次世界大戦)発生の可能性を含む第二次世界大戦以降最大の安全保障上の挑戦に直面しているのにその認識が不十分なこと、結果米軍は紛争の発生を抑止し紛争が発生時に勝利すると自信をもって言うに必要な現在および将来の能力に欠けていること、危機的状況にもかかわらず、この報告に対し国内でほとんど無視されているという「危機感の欠如」の全てに向けられている。
念のため、この「報告書」の事実関係について触れておこう。発端は、米議会が2022年度の国防権限法で22年にバイデン政権が発表した今の国家防衛戦略を分析・評価するため独立の委員会を創設したことにある。
委員会は上下両院国防委員会幹部が指名した超党派の9人からなる。議長はJane Harman元民主党下院議員で、副議長は、国務省出身のEric Edelmanである。他は、陸軍参謀長代行を務めたこともあるJack Kene、CSBA理事長のTom Mahnken、その他サイバー、中東等の専門家からなる錚々たるメンバーだ。