<油価が下がっている背景>原油生産量の足並みが揃わないOPECプラス各国の事情

2024.09.25 Wedge ONLINE

 9月5日付けニューヨーク・タイムズ紙は、油価の低下に対して油価を高止まりさせたいサウジアラビアが主導して石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」は自主減産の継続を決定したが、アラブ首長国連邦(UAE)やイラクのような他のメンバー国は増産している、という解説記事を掲載している。要旨は次の通り。

(Rasi Bhadramani/gettyimages)

 9月5日、OPECプラスで知られるサウジアラビアをはじめとする7産油国は、油価低下の強い圧力を受けて生産削減を少なくとも12月まで延長した。OPECプラスが200万バレル(B/D)以上の生産削減を停止するという6月の発表を撤回したのは油価の維持を意図しているが、国際的な油価のベンチマークである北海ブレントは、7月以来、15%低下し、72ドルとなっている。

 専門家は、油価の低下は中国の需要が弱いこととブラジル、カナダ、ガイアナ、米国等のOPECプラス以外の産油国が増産を続けているためだとしている。

 専門家は、サウジアラビアが主導する減産計画はUAE他の産油国が増産を続けているために市場の信用を一層傷つけていると見なしている。総量でOPECプラスは、500万B/Dの減産、言い換えれば5%の生産削減を行っており、もし、この生産量が市場に戻れば、油余りは確実となる。

 生産拡大を遅らせる(減産を継続する)のは、このようなネガティブなセンチメントを変化させることを意図している。しかし、この賭けが成功するかはやってみなければ分からない。

 市場は、OPECの事実上のリーダーであるサウジアラビアは難しい立場にいる、と見ている。サウジアラビアの石油大臣であるアブドゥルアジーズ・ビン・サルマン王子は、困難な環境下でバランスを取りながら何カ月もの間、油価を相対的に高止まりさせてきた。しかし、ほとんどの他の産油国は別の思惑を持っている。

 例えばUAEやイラクの様な産油国は、より増産したいと望んでいる。S&Pグローバル・インサイツ社の原油調査部門の責任者であるジム・バークランド氏は、今回の減産継続の発表前に、「増産は、(OPECプラス)の足並みを揃えるために必要であり、(OPECプラスとして)増産しなくても幾つかの加盟国が(勝手に)増産してしまい、ともかく原油生産は増えるだろう」というレポートを書いている。

 油価が低下傾向にある中で、サウジアラビアは、少なくとも(OPECプラスが)自主減産を継続するというシグナルを出す必要があることについて他の加盟国を説得した。OPECの8加盟国の声明では、「より強い決意で(自主減産への)強固なコミットを新たにする」と述べているが、その一方で生産削減は、その後、毎月、徐々に緩和されていくであろうとも述べ、さらに、この減産緩和は、停止されたり、削減されたりするとも警告している。

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中東産油国の油価判断の基準

 ここ数カ月間で油価が大きく低下している。9月7日現在の油価は68ドル/Bで2022年2月のロシアのウクライナ侵攻をきっかけに油価が115ドル/Bまで高騰し、当時、中間選挙を控えたバイデン大統領がサウジアラビアを訪問して原油の増産を要請したものの相手にされなかった状況と大きな様変わりだ。

 その後、油価は徐々に下がって68ドル/Bまで下がり、昨年10月のハマスのイスラエル攻撃で再度、100ドル/B近くまで上昇したが、ガザの衝突が原油生産に大きな影響を及ぼさないでいる事から、原油をめぐる地政学的リスクの懸念は低下し、この記事が指摘するように、経済の不振による中国の原油需要の低下、非OPECプラス加盟国諸国の増産により再度油価が低下しているのが現状である。