<中国はロシア支援継続に楽観的?>西側諸国の制裁を乗り切るロシアに感銘を受けた中国の次の狙いとは

2024.09.02 Wedge ONLINE

 米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のブランシェット中国研究部長が、Foreign Affairs(電子版)の8月13日付け論文‘China Is in Denial About the War in Ukraine’において、中国のアナリストの間では、ウクライナ戦争の影響につき当初の悲観論が今や楽観論に取って代わってしまったとして、彼らがそのような認識に至っていること自体が台湾海峡や世界を危険な方向に導くことになりかねない、と懸念を示している。概要は以下のとおり。

(Zerbor/gettyimages)

 ロシアによるウクライナ侵攻後の数週間、中国政府は慎重ながらもロシアを支持する姿勢を見せた。しかし中国のアナリストは、この紛争が中国と欧米の関係にダメージを与え、世界経済をさらに分裂させ、中国の最も重要なパートナーであるロシアの富と力を弱める可能性があるとして、公然と懸念を表明していた。

 ところが戦争開始から2年以上が経ち、そのような厳しい悲観論は慎重な楽観論に取って代わられた。アナリストたちは、ロシアと中国の経済は西側諸国の制裁による壊滅的な被害をほぼ回避したと考えている。ロシアは防衛産業基盤を再構築し、極端な外交的孤立をも回避した、ということだ。

 ウクライナ戦争に関するこれらのアナリストの結論には、明らかに見過ごされている現実がある。中国は実際、プーチンの戦争とそれに対する中国の経済的、外交的支援の結果としてコストを払っているのだ。

 多くの欧州諸国との関係は容易には回復できないほど悪化した。また、ウクライナ領土を奪取したいプーチン大統領の欲望と、台湾を吸収したいという中国の長年の願望の対称性は、米国とインド太平洋地域の同盟国に防衛強化を促している。

 中国の専門家は、プーチンの戦争について一枚岩ではない。しかし総じて彼らの初期の反応は、この戦争が冷戦後の歴史的な転換点となるのではないかと懸念するものであった。中国の学者たちは一貫して、ロシアの侵攻が「歴史の分岐点」であり、国際秩序の大きな再編を促すだろうと結論付けていた。

 中国のアナリストは、西側諸国が協調してロシア経済に制裁を科そうとしていることに特に驚いた。国際金融システムにおいて米国は依然として比類のない権力を握っていると結論づける者もいた。制裁が効き始め、ロシア軍がつまずくと、中国の学者たちは、戦略的パートナーとしてのロシアの貴重な地位が危うくなるのではないかと懸念した。

 しかし今日、中国の専門家の間では遥かに楽観的な見通しが支配的になっている。彼らは戦争への西側諸国の対応が、多くの人が予測したほど悲惨な結果をもたらさなかったと指摘している。中国のアナリストの多くは、プーチン大統領の北朝鮮ほかへの最近の訪問や、モディ首相の訪露を挙げ、ロシアは外交的孤立を真に回避したと主張している。

 この見方によれば、中国はプーチンの戦争努力を支えるために、大きな経済的・外交的代償を払うことを回避したことになる。西側諸国の制裁を乗り切るロシア経済の能力は、多くの中国の学者に感銘を与えた。この戦争は「ロシアの軍事産業の全面的な回復」につながったと指摘する者もいる。

 こうしたことは、台湾に対する中国の計画にとって非常に重要な意味を持つ。ウクライナでの戦争を見て、西側諸国は紛争には耐えられず、経済的コストが高ければ侵略軍に対峙して民主主義国を守ることに疲れてくるだろうと、多くの人が結論付けた。

 この結論はしばしば誇張されており、恐らく米国の決意を過小評価している。しかし、彼らがこのような結論を出したこと自体が、台湾海峡、そして世界全体がさらに危険な方向に向かいつつある可能性を示唆している。