――ベンチで見ていて、「どうして振らないんだ?」というもどかしさがあった?
髙津 自分がピッチャーだったので、ピッチャー目線で言うと、ピッチャーって、狙ったところに投げるのは本当に難しくて、むしろなかなか思い通りに投げられないものなんです。でも、それをバッターが簡単に見逃したり、ファウルにしたりしてくれると、本当に「助かった」と思うものなんです。もちろん、顔には出さないけど、内心では「あぁ、見逃してくれて助かった」とか「打ち損じてくれてよかった」って思っているものなんです。
――そうしたピッチャー心理を若手打者に伝授していくということですね。
髙津 だから、うちのケースで言えば、代打で登場する川端慎吾、青木宣親は、初球の真っ直ぐを振りにいくじゃないですか。あの姿勢は見習ってほしい。初球から振っていく理由はそれだけではないでしょうが、ピッチャーの失投を見逃すということは、今度はバッターのミスになるんです。そうすると、カウントは投手有利になるし、打者としてはストライクゾーンを広げる必要が出てくる。そうなるとボール球に手を出す可能性も高くなる。たった一球で、局面が大きく変わってしまうんです。
――就任4年目を迎えた監督ご自身の反省点はありますか?
髙津 もちろんあります。野球というのは、どんどん進化、成長していくものだけど、そこに僕自身もきちんと対応していかなくちゃいけない。自分では「遅れている」とは思わないけど、むしろ「先取りする」ぐらいじゃないといけないし、もっともっと勉強しなければいけない。戦術、技術面の指導に加えて、もっといい言葉、もっといい伝え方も探していかなければいけない。そんな思いは強いです。
――監督として成長していくためにお手本とするもの、教科書となるものは何かありますか?
髙津 具体的に「教科書はコレです」というものはないですけど、大切なのは「感じ方」だと思います。要は、自分が何を感じるか、感じないのか? そんなところが大切になってくると思っています。日々、手探りの部分はありますけど、自分がどんな刺激を得て、何を感じるのか? その点は意識したいです。
――新聞やニュースなどで、評論家の意見を参考にすることありますか?
髙津 もちろん、僕も毎日、新聞は読んでいますからそうした記事は目に入ります。でも、それに影響を受けることはないですね。もちろん、的を射た指摘もありますが、どうしてもその場にいない人、内部事情を知らない人の場合は、想像でものをいうことが多くなってしまう。その声に左右されることはないですね。
――どんなに不振でも「三番・山田、四番・村上」にこだわり続けた理由、あるいは「采配」については、全日程終了後、次回のこの連載で伺います。では最後に、残りわずかとなった今の気持ち、ファンの方へのメッセージをお願いします。
髙津 我々の仕事はお客さんに楽しんでもらうことだと思っています。今季は優勝はできなかったけれど、まだ試合が残っています。「ぜひ楽しんでもらいたい、喜んでもらいたい」という気持ちを持って、全力で残りの試合に臨みます。最後まで面白い試合を目指します。ぜひ「応燕」、よろしくお願いします。
過去の連載をまとめた髙津臣吾監督のビジネス書『明るく楽しく、強いチームをつくるために僕が考えてきたこと』が、アルファポリスより大好評発売中!