――奥川選手同様、村上選手についてもずっと「10年後、20年後を見据えている」と話していましたね。順調な成長曲線、育成段階を経ている手応えはありますか?
高津 何年後になるかはわからないけど、何年後かに「あのときの育成方針は正しかったんだな」と思える日が来ると信じて我々は彼らと接しています。あの清原和博さんの記録を抜いて、史上最年少で通算100号を達成したのは本当にすごいことだと思います。でも、今の彼が清原さんだけでなく、松井秀喜、金本知憲、落合博満さんのような「日本を代表する四番打者」かと言えば、まだまだそんなレベルじゃない。実際、オリンピックでも八番打者としての起用でした。村上が「日本の四番」となる日を楽しみにしています。
――現在は巨人、阪神との6連戦の真っ只中です。勝負の決め手となるのは何だと、監督はお考えでしょうか?
高津 時の運でしょうね。
――前回のこの連載でもご紹介した、1993(平成5)年日本シリーズ第7戦の試合前に野村克也監督が口にした「ここまで来たら、あとは時の運だ」という発言ですね。
高津 最初に言ったように、我々は万全の準備をして目の前の戦いに全力で臨むだけ。優勝争いという土俵に上がることを許された幸福感を忘れずに戦うだけです。
――先ほど話題に出た奥川、村上両選手のような若手の躍動の一方で、前回2015年の優勝を知る石川雅規、小川泰弘、石山泰稚投手、山田哲人、川端慎吾選手らの「経験」も大切な要素になってくると思います。
高津 確かに、一度経験しているということは非常に大きな強みになります。経験していないよりも、していた方が心を落ち着けることもできますから。ただ、僕の経験で言えば何回経験してみても、興奮度合いも緊張感も、毎回感じ方は違うんです。これは何度優勝を経験してもそうでしたね。