――さて、侍ジャパンの全5戦ですが、監督はすべてご覧になったんですか?
高津 もちろんです。あるときは自宅で、あるときは遠征先のホテルで、いずれにしてもじっくりとテレビ観戦しました。
――ヤクルト時代のチームメイトである稲葉篤紀監督について、どのようにご覧になっていましたか?
高津 侍ジャパンの監督に就任したときの最終目標は、もちろん「東京オリンピックで金メダルを獲得する」ということだったと思います。そこで、長い時間をかけていろいろなプランニングをして、選手、コーチを含めた人選をして、12球団と緊密な連携を取って、しっかりとしたマネジメントの下、いいチームを作ったんだろうなと思いますね。もちろん、最後は選手がよく頑張ったけど、監督としてすばらしいマネジメント力を発揮したと思います。
――現役時代をともに過ごしたチームメイトとして、稲葉監督はどんな方なんですか?
高津 人間的に優しいというのが大きな特徴だと思いますね。稲葉のことを悪く言う人は一人もいないですからね。選手としては、負けん気を全面に出したり、積極的に声を出したりするタイプではなくて、周りをじっくりと観察しながら、「自分は何をすべきか、どうすべきか?」考えるタイプだった気がします。
――指導者経験がないまま、いきなり侍ジャパンの監督になるということは、相当なプレッシャーだったと思います。
高津 そうでしょうね。キャンプ中やシーズン中に稲葉監督が視察に来たとき、僕もじっくり話をしました。普通にしゃべっているときは以前通りなんだけど、ちょっと深い話をするときにはやっぱり、目つきが変わるというのか、話し方が変わりましたね。そこには緊張感やプレッシャーのようなものがあって、「いろいろな感情を持っているんだろうな」と感じたことは覚えています。
――監督からは稲葉さんに何か声をかけたんですか?
高津 僕から言ったのは、「哲人もムネも、どんな使い方でもいいから自由に使って下さい」ということですね。結果的に大会本番ではDHだったり、8番打者であったり、普段とは違う起用法だったけど、彼らにとっても、いい経験になったんじゃないのかなって思いますね。