20年以上前からこのことを知っている私は、ビジネスにおいてもこのテーマを散々扱ってきました。
ここで、ちょっと視点を変えてみます。
「共感」と「同感」の一見似たようなこの2つの言葉に、どのような違いがあると思いますか?
共感と同感は、似た言葉ですが、この2つはコミュニケーションにおいて、大きな違いを生みます。
同感:同じ意見であること
共感:相手が感じたように感じてあげること
たとえば、女性の友人から次のような相談をされたら、皆さんはどう対応しますか?
「いま付き合っている彼氏がいるのですが、暴力をふるいます。機嫌が悪いと、蹴ったり叩いたりしてきます。でも、暴力があったあとはすぐに反省して心から謝ってくれるし、すごく優しくなります。暴力がイヤだから別れたいけど、その優しい彼が好きで、離れられません。どうしたらいいのでしょうか」
安易には返答しにくい、ナイーブな相談です。
そのため、傷ついてる彼女の気持ちを考え、彼女の意見を否定せず、全面的に寄り添うようなアプローチをとるべきでしょう。しかしその場合でも、じつは2つの種類があります。
同感アプローチと共感アプローチです。
その友人に対して、何らかの意見を主張したなら、それは「同感アプローチ」になっています。
・別れた方がいいんじゃない?
・別れられないということは、まだ好きなんじゃないの?
・あなたがどうしたいかが大切なんじゃない?
・専門家に相談するべきなのではないか
・代わりに私が専門家に掛け合ってみようか?
ちょっとわかりづらいのですが、上記の発言には、相手に寄り添っているようで、じつは真っ先に自分の意見が現れています。いわば、同感だという自分の意見を、相手に通そうとしているわけです。
では、「共感アプローチ」とはどういう対応になるのでしょうか。
・「それはつらいね」
相手が感じているように、自分も感じとるだけ。
これが、共感アプローチです。
暴力も振るわれていて、身の危険もあるこの状態を、共感アプローチだけで済ませることは、男性脳ではありえないことでしょう。すぐにでも行動を起こし、解決に向かいたい衝動があるはずです。
ところが、ただ話を聞いて共感してほしいだけなのです。
この話をもとに私は、ビジネスの世界でも共感アプローチの姿勢を重視し、「アプローチの順番が大事」だと伝えています。
同感アプローチでは、自分の意見が先に来ます。これを上司が部下に行った場合、一見寄り添っているようであっても、上司は部下の話を聞かない、ということになります。
すると、部下も部下で、上司の指示に対して「なんであんな指示を出すんだろう?」「私はもっと違う方法のほうが良いと思う」と、自分の意見を先にして、上司の指示を理解しようとする働きが弱くなります。
逆に共感アプローチでは、相手の話を理解することが先に来るので、上司は部下の話をよく聞いてくれる。わかってくれる。すると部下は、上司の指示が理解できないときに、「きっと肯定的な意図があるんだろう」と想像したり、良いほうに解釈し、くみ取ってくれる働きが強くなります。
組織において、リーダーが同感アプローチなのか、共感アプローチなのか、どちらなのかによって、部下も上司に対して同感アプローチにも、共感アプローチにもなってしまうのです。
順番として、まず共感を示し、その後、どうするか、意見をすり合わせる。その順番を守れば、組織はうまくいきやすくなります。
男性脳、女性脳の話に戻ります。女子高生同士の会話に男性がついていけないのは、単純な世代ギャップだけでなく、問題に対する向き合い方が異なるからです。
「彼氏とこんなことがあって……」
「え? ほんとに? サイテー。私もさ、同じようなことがあってさ……」
「うそー、信じられない。キツイね。私もさ、こないだこんなことがあって……」
このとめどないラリー、解決されないままの問題が積み重なっていくたびに、男性脳は、思い浮かぶ解決策を話し合いたいとうずうずし始めます。
「この手を打てば一発解決じゃん」
「それは気にしなくていいでしょう」
「それはこう考えてみてはどうかな?」
それらは全て、彼女たちに望まれていることではありません。男性陣は、思い浮かぶアドバイスを口にするのをやめ、共感を示すことから始めなくてはいけません。
問題は、関係性を強化するチャンスです。
女性の愚痴や悩みは、妙に生々しいと思いませんか?
男性から見ると、非常に具体的で、解決策のヒントがたくさんあるので、どうしても解決したい衝動が生まれてしまうのですが、女性は解決したくて話しているのではなく、共感してほしいからこそディテールを細かく表現するのです。
その罠にハマってはいけません。
では、どうすればいいのか。
これは、「共感を示すゲーム」だと思えば、男性脳は落ち着きます。悩みや愚痴を通して、関係性を構築するチャンスだと思うと、あなたのイライラはなくなり、愚痴に付き合うことができるようになるでしょう。