「家族」というチームのつくり方

「お互いに期待しない夫婦」の方がなぜかうまくいく訳

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仕事ができる優秀な人ほど、じつは家庭が崩壊している……。そんな例は少なくないようです。数々の問題ある組織を改善させていった、組織運営のプロである筆者が、「家族」という扱いの難しい組織をうまく運営する方法をお伝えいたします。

自分の妻に期待してはいけない

突然ですが、「妻に期待してはいけない」「夫に期待してはいけない」と言われたら、どう感じますか?

もしかしたらすでに相手に対して期待することをやめていて、「まさにそのとおり!」とひざを打つ人もいるかもしれません。
ですが、やはりそれは少数でしょう。多くの人は「夫婦関係をあきらめろということですか!」と反発を覚えるように思います。

多くの夫婦はお互い相手に対して期待しているものです。たとえば、家事の役割分担に際しても、

・お風呂掃除はどっちがやるのか?
・料理を作るのは誰?
・洗い物は?
・部屋の片づけは?

家事の役割分担がすでにできていたとしても、「もっとこうしてくれたらいいのにな」「これをやってほしいな」という、ちょっとした期待が日々のなかでもあるわけです。

家事に対するこまごまとしたものだけでなく、もっと漠然とした期待もあります。
「どんな妻であってほしいのか」「どんな旦那であってほしいのか」、お互いに対して、理想を抱きつつ、夫婦というのは生活しているものなのです。
そして、言うまでもありませんが、相手に期待するというのは、決して悪いことではありません。

そのため、「妻に期待してはいけない」「夫に期待してはいけない」と主張するのは、とてもネガティブな意見に感じることでしょう。
「お前には期待してないからな、と言えばいいんですか?」「え? では自分の期待は我慢して、妻の言いなりにならないといけないということですか?」となって、怒りすら湧いてくるかもしれません。

ですが、そういうことではありません。期待の扱い方が上手になると、夫婦はうまくいくのです。

仕事のデキる人ほど相手に期待するが、
本当に優秀な上司は相手に期待しない

期待というのは、ビジネスにおいて非常に重要な観点です。期待は「満足度」に影響します。
以下の方程式をご覧ください。

期待 < 現実 → 感動
期待 = 現実 → 満足
期待 > 現実 → 不満

お客様が自社のサービスに満足するかどうかは、上記で示した方程式のように「期待」と「現実」のギャップで決まります。

飲食店に行ってサービスを受けたときに、「こんな味かな」「こんなサービスかな、「これくらいの値段かな」という期待があり、期待通りであれば満足します。これは、真ん中に示した「期待 = 現実 → 満足」のとおりです。
そして、上の方程式「期待 < 現実 → 感動」のように期待を超えれば感動し、下の方程式「期待 > 現実 → 不満」のように期待を下回れば不満になるのです。

この方程式は、上司と部下のコミュニケーションでもそのまま当てはまります。
部下が資料を作って持ってきた時のことを想像してみてください。自分の期待を上回る資料を作ってきたら、感動しませんか?

「すごいな、よく思いついたな」
「素晴らしいクオリティだ」
「ここまで仕上げたのはスゴイよ」

部下が常に上司の期待を超えてくれたら、褒めるのもカンタンです。期待どおりの資料でも問題ないでしょう。
ところが、期待を下回ったらどうでしょうか。

「これ、前にも教えたよね?」
「ちゃんと考えた?」
「なんでできないの?」

期待を下回ると不満がつのります。このとき、上司は部下を褒めることがとても難しくなります。
すべての仕事で部下が期待を下回ってくると、上司は毎回不満を抱くようになり、徐々に不機嫌になり、部下は自信をなくし、萎縮し、さらに仕事ができなくなってしまいます。

私は、ビジネスにおいては、期待を3つに分解することを推奨しています。難しいことではありません。過去と現在と未来に分けるのです。

未来への期待 … 大いにけっこう
現在への期待 … してはいけない
過去への期待 … 絶対にしてはいけない

この3つに分けると、期待の扱いが上手になります。
未来への期待は、どんどんした方がいい。むしろ、明確にして伝えるべきです。今後どうなってほしいのか、どうしてもらうのがより好ましいのか。未来への期待ははっきりと具体的に伝えます。
過去への期待は、絶対にすべきではありません。

「今まで何を習ってきたの?」
「前回教えたよね」
「小学校でしつけられた?」
「親の顔が見てみたい」

かなりひどい言葉ですが、これらはすべて過去への期待からの発言です。過去に期待したところで、何も改善しません。厳しく言うなら、「自分の教え方の下手さ」を「相手の過去」のせいにしているとも言えるわけです。

本当に優秀なリーダーは、過去のせいにしたりはしません。どうしたらこの部下が育つのか、未来志向で考えます。

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プロフィール

高野俊一
高野俊一

組織開発コンサルタント。
1978年生まれ。日本最大規模のコンサルティング会社にて組織開発に13年関わり、300名を超えるコンサルタントの中で最優秀者に贈られる「コンサルタント・オブ・ザ・イヤー」を獲得。これまでに年200回、トータル2000社を超える企業の組織開発研修の企画・講師を経験。
指導してきたビジネスリーダーは累計2万人を超える。
2012年、組織開発専門のコンサルティング会社「株式会社チームD」を設立、現代表。
2020年よりYouTubeチャンネル『タカ社長のチームD大学』を開設。2023年6月現在、チャンネル登録者約3万5000人、総再生回数380万回。
2021年より、アルファポリスサイト上にてビジネス連載「上司1年目は“仕組み”を使え!」をスタート。改題・改稿を経て、このたび出版化。
著書に『その仕事、部下に任せなさい。』(アルファポリス)がある。

著書

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その仕事、部下に任せなさい。

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