成績が振るわない、メンバーが互いに無関心でいっさい協力し合わない、仕事を作業と思っており楽しそうに働いていない、離職者が多く人の入れ替わりが激しい……。これらは日本の多くの職場で見られる光景です。こうした環境に疲弊し、働くことに希望を見出だせない人が増えています。
この絶望的な状況を変えられる唯一の方法が「チームづくり」です。チームづくりがうまくいけば、すべてが劇的に変わります。部下も会社もあなた自身もラクにする、チームづくりのノウハウを指南します。
この連載をまとめ、大幅に加筆・改稿した、ビジネス書『チームづくりの教科書』(高野俊一)が、アルファポリスより好評発売中です。
部下をクラッシュさせてしまうヤバい上司にならないようにするためにも、チームをダメにするリーダーのマインドについて把握しておきましょう。
これは、無自覚に振る舞ってしまうものなので注意が必要です。次の5つです。
① 利己的すぎる
② 近視眼すぎる
③ 結果を急ぎすぎる
④ 感謝の気持ちがなさすぎる
⑤ 他者への期待が高すぎる
部下の利己的欲求は、利他的な欲求につなげる発想が大事です。「給料を上げたい」「自分を成長させたい」といった利己的な欲求を満たすためには、「仲間のため」「お客様のため」という利他的な欲求へと昇華し、チームの共感目標につなげるべきというのが理屈です。
これは部下へのアプローチでしたが、リーダーが同様の方法で利己的な欲求を利他的な欲求として掲げた場合、見透かされてしまうことが多々あります。「自分の都合を優先させている」と見えてしまうのです。
利己的に見えてしまうのは非常に損です。その可能性が少しでもあったら、改善するべきでしょう。
こうしたことは多くの場合、自分で気づけないものです。信頼できる人に、自分自身が利己的に見える瞬間がないか、聞いてみるべきです。
そして、自分の言動のどこが利己的に見えるのか、それを知ることから始めなくてはなりません。
近視眼とは、あまりに近い未来しか見ていない様です。
チームづくりは、今日取り組んで今日結果が出るようなものではありません。目標を掲げ、関係性をつくり、主体性を引き出し、弾み車を回し、勝手に育つ仕組みをつくっていくという、中長期の活動です。
近視眼すぎるリーダーは、目標の設定も短いことが多いです。1ヶ月先の目標を設定するのもやっとで、未来の目標なんて、決めても意味がないとか、決めないほうが柔軟に対応できてよい、などと本気で考えていたりします。
何を隠そう、私もそう考えていた時期がありました。目標なんて立てても、状況は変わるし、意味がないんじゃないか。むしろ現状を観察して、臨機応変に対応した方がいいんじゃないか。そう思っていたのです。
この考え方は一理あります。これだけ環境の変化が激しい現代において、遠い未来を描くよりも、その場その場での瞬発的対応力で組織を運営していくアダプティブ戦略(適応型組織戦略)をとるべきだ、というわけです。
しかし、チームづくりにおいては、不利な考え方です。チームは、時間をかけて遠い未来にある目標に向かって1つになる必要があるのです。どんな未来をつくりたいか、その未来像に共感してもらい、チームはゆっくりと強くなっていかねばならないのです。
チームづくりと結果の相性は、順番を間違えると組織を崩壊させる大問題になってしまいます。
組織の成功循環モデルでも解説しましたが、「結果の質」を重視すると、「関係の質」が悪くなり、「思考の質」が悪化し「行動の質」が下がり、「結果の質」が悪くなるというあれです。結果を焦っていいことは何もありません。結果を焦るとこのサイクルが、バッドサイクルに入ってしまいます。
それでも早く結果を出したい人は、結果を求めるのではなく、グッドサイクルの回転速度を速めるしかありません。結果を急ぐ人は、アプローチをしっかり設計して、うっかり組織を崩壊させないように気をつけてください。